題名 : 壊れた時間の先に 著者 : YasunoV
第1話「 金曜日、午前9時40分 」
なんということはない・・・
金曜日、午前のドルロレの噴水広場前・・・・
たくさんの露店、騒ぐ子供達・・・。
買い物かごに日傘を持った奥様たちが井戸端会議をしている・・・
それをボンヤリと見つめながら私、ビートは一人の男を待っていた・・・。
いつもは病院で「薬剤師」の仕事をしているが、今日は特別な日。
わざわざ「有給休暇」を取って待ち合わせをしている・・・。
「待ち合わせまで後、10分・・・だけど・・・」
暑い・・・
夏も終わりかけているというのに、この暑さ・・・
「あぁ・・・せめて屋根のある所で待ち合わせるんだった・・・」
言って当然・・・
天候は快晴 気温34度 湿度42% にも関わらず 無風・・・
空には雲一つ無い・・・
頭に掛かる日差しは白い帽子を突き抜けて茹だる様な暑さが襲いかかってくる。
目の前の風景は石畳に反射した日差しのせいで、うざったくなるほど陽炎が発生・・・。
お気に入りの「白いワンピース」を着たけど、汗を流しながら私は「一人の男」を待ち続けている・・・。
「 本当にいい加減なヤツだけど・・・約束だけは守るのがテリィのいい所・・・。どうだろう・・・?あの頃と変わってないのかな・・・? 」
テリィと会うのは5年ぶり。
今日はテリィと5年前に交わした約束の為に、この場所で待っている。
そう、5年越しの待ち合わせの約束・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数多の死者を出した史上最悪の戦争、ドルロレ、イデア戦争。
略して『ドルイ戦争』。
5年前、ドルイ戦争終結の日
ドルロレとイデアが犯した大きな過ちを、それぞれの国家が悔い改めた歴史的な日・・・。
大きな傷跡を残しながらも人々が懸命に生き、明日を夢見ようと努力していた・・・。
そんな中、それに背を向ける男を私は引き留める・・・。
・・・・・・・
テリィ「・・・終わったな・・・〜〜〜ここで俺ができる事はもう何も無い・・・」
ビート「ま、待ちなさいよ!!戦争が終わったからって、何処に行くつもり!?」
テリィ「・・・「人員の多さ」がドルロレの売りだろう?俺は人員の少ない「イデア」に移民する・・・。」
戦火が消えたとはいえ、未だに騒がしいドルロレ城下町・・・。
金の鎧に身を包んだ戦士、当時18歳のテリィは荷物をユニコーンに括り付けている。
数回ユニコーンの首を撫でると機嫌を良くしてかテリィに頬ずりをしてきた。
ビート「そ、そんなッ!!テリィは「第1騎士部隊長」でしょ!?責任のある貴方が・・・」
慌てて引き留める私を無視してテリィは頭を数度ボリボリと掻いた・・・。
私の言う事などお構いなしなこの態度・・・正直、腹が立つ。
テリィ「はっはっは、「移民」って言ったって二度と戻ってこない訳じゃないんだぜ?気持ちよく旅立たせてくれよ??」
違う、この男は二度と戻ってこないつもりだ・・・。
元々この男はドニアで雇われた傭兵だったのに「全兵団、総指揮官のクロノス様」の力に惚れ込んで騎士団入りした・・・。
驚く程の我流剣技の腕前であっという間に「隊長」まで登り詰めたのだが、今回の戦争でクロノス様が戦死してしまった・・・。
そう、答えは単純・・・この男にとってこの国にいる理由が無くなっただけ・・・。
仲間に対してはもの凄く「義理」を通す男だと思っていただけに、どうにも腹が立つ・・・。
テリィ「ど、どうした・・・?そ、そんなに恐い顔をするなよ?なぁ、お嬢ちゃん・・・?」
テリィの表情から、きっと今の私はかなりの形相になっているに違いない・・・。
自分で言うのもおかしいけど、冷静に話そうと思えば思う程・・・頬のあたりがヒクヒクと動いて止まらない・・・。
汗を垂らしながら私の頭を撫でる・・・。
当時14歳という年齢の私に対していつも「子供扱い」をしてきたテリィ。
本人に悪気はないと言う事はわかっているが、それが又、質が悪い。
「さっきの発言」もさることながら「この行為」が私の神経を更に逆撫でした。
ビート「ふざけないでよッ!!せめて国家の回復を待ってから旅立つのが常識でしょ??
それとも何?クロノス様が居なくなったら、この国は「見捨ててもいい」って訳??
あなたはこの国に残るべきなのよ!!!」
抑えていた感情が爆発する。
戦争終結で解散したとはいえ、仮にも私だって「第10医療師団」の師団長だったんだよ??
この位の事を言う権利はあるし、もちろんそれを守る義務がテリィにはある。
なのに・・・
テリィは・・・・
『 『 『 『 バッ!!! 』 』 』 』
ユニコーンに跨るんだね・・・
テリィ「クロノス様は関係ないさ・・・。
それにお嬢ちゃん・・・俺はドルロレを見捨てる訳じゃないぞ?
人があまりに少ない「イデア」の復旧を助けたいんだって言ってるじゃないか?
イデアの有力貴族はクラージュ公爵家を筆頭にして、今や「たった3つ」。
おまけに「イデア三銃士」も2人戦死してしまって、今ではたった一人だ・・・。」
ビート「でも・・・でも「イデアの魔人」とかいう魔法使いがいるんでしょ?だ、大丈夫だよ・・・イ、イデアはイデアで復旧す・・・」
青ざめて・・・自分の愚かしい発言に下を向いてしまう。
テリィの言う事は筋が通っていて正しいわ・・・。
それに対しての私の答はあまりに愚鈍で「優しさ」が欠けている。
テリィ「イデアもドルロレも関係ない・・・。人々は助け合うべきだ・・・。」
その通りだわ・・・。
言われなくっても解ってる・・・。
言われる前に反省しているぐらいだから・・・。
でも、私は・・・どうしてもテリィがドルロレから出て行くことに快諾できなかった・・・。
テリィ「じゃぁな、お嬢ちゃん!!いつかはわからないが、ドルロレに戻ったとき・・・気が向いたら会おうやッ!!」
無邪気な笑顔・・・憎たらしいぐらいの満面の笑顔・・・
私は上目遣いでユニコーンに跨ったテリィを無言で見つめる・・・。
テリィ「さぁ、エリザベートッ!!方角は南西、イデアに向けて全速力だーーーッ!!」
ヒヒーンと身を仰け反らせて、大地を駆けて行く・・・。
このまま・・・
私は・・・・
無言で・・・・
テリィを見送る・・・・
・・・・・・・・・・・・
そんな訳が無いッ!!!!!!!!!!!!!!!
ビート「その身を貫けッ!!!サンダーーーーー!!スピアッ!!!」
『 『 『 『 ズバーーーーーーーーンッ!!!! 』 』 』 』
テリィ「ギィヤァーーーーーーッ!!!?????」
エリザベート「ヒヒーーーーーーンッ!!」
60m先で私のサンダースピアを直撃したテリィとエリザベートが見える・・・。
テリィは良いとしてエリザベートには少し申し訳ないが、あんなチャランポランな飼い主を持った自分に
諦めて欲しい・・・。
ゆっくりと歩いていくと地面に横たわる「虫の息のエリザベート」に向かって号泣しているテリィに追い付いた。
テリィ「エ、エリザブェートッ!?ウェリザ・・・ウェ、ウェリズァブェーーーートゥオォォォォォォーーーーッ!!!!」
愛馬エリザベートから少し美味しそうな匂いが漂ってくる・・・。
テリィ自身は焦げた匂いしかしてこないがやはりタフネス・・・ピンピンしている。
手加減していたとはいえ・・・まったく、この男はどこまで頑丈なのか?
呆れてきた・・・。
テリィ「お、おま・・・俺の・・・俺のエリザを・・・ここ・・・この・・・・」
振り向き様、私に怒ろうとするが、私が無言で何も言わなかった事を良しとしてイデアに行こうとしたテリィも悪いんだもん・・・。
私は誤る必要は無い。
しかし、このままではエリザが可哀想なのでやっぱり救済・・・。
このままじゃ、ただの悪者に成りかねないしね・・・。
『 『 『 サッ・・・ 』 』 』
指をサッと振り、自慢の回復魔法をエリザベートに掛ける。
エリザベート「ヒ、ヒヒーーーーンッ!!」
全身を回復させて、嬉しそうに起き上がるエリザベートがテリィに擦り寄る。
例え瀕死の状況に陥っても、私の魔法は完全に体力を回復させる事ができるから・・・
まぁ、「生かすも殺すも私次第」・・・?
テリィ「お、お嬢ちゃんッ!!いくらなんでもこれはないぞ?今度、サンダースピアなんて使ったら・・・」
ビート「・・・・・・・」
無言で指をテリィに向ける・・・。
テリィ「・・・な、なんでもないよぉ〜〜〜・・・・」
男泣きが無様なテリィ・・・。
もう・・・この男だけは絶対に許せない・・・。
許せないテリィに・・・一つ・・・約束を持ちかけてやる!!
ビート「テリィ・・・一つ約束して・・・」
テリィ「な、なんだよ?」
ビート「5年後の朝10時、復旧したドルロレの中央広場、噴水の前で再会しましょう。」
テリィ「な、なんだそりゃ・・・?」
突拍子も無い約束事に眉をしかめるテリィ。
確かにテリィにとって、こんな約束なんてどうでもいい事・・・。
でも、私はこの男を許せない。
最後の最後まで「自分の我」を押し通し、私を「お嬢ちゃん」呼ばわりしたこの男を・・・。
テリィ「ご、5年後じゃなくても・・・会いにくるぞ・・・?」
ビート「嫌よ・・・5年後!!
それ以前に会うことは絶対にしたくない。
私とテリィは5年後の今日まで、ずっとサヨナラッ!!!
いいわねッ!?会いに来たらまたサンダースピアなんだからッ!!!」
怒鳴って俯く。
私の言いたい事は言ったから、テリィなんて・・・もう何処にでも行っていいョッ!!
もう、どうだっていいんだからッ!!
テリィ「・・・・・・」
『 『 『 『 ポフッ・・・・ 』 』 』 』
私の頭に突然乗ッかかる・・・。
とても大きく優しな「力」・・・。
テリィ「わかったよ・・・5年後、噴水前で会おうッ!!」
ビート「・・・・・・・・」
テリィは私の顔を見ようとはしない。
いや、もしもあの時・・・顔を上げさせられていたらブッ叩いていたかもしれない・・・。
何故かは解からないけど涙が止まらなくって・・・しょうがなかったから・・・。
テリィ「じゃぁ、また5年後!それまでは俺も『お嬢ちゃん』には会わないからな?」
ビート「い、言われなくったって・・・ッ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・
これが5年前、テリィが私のことを『お嬢ちゃん』と呼んだ最後の瞬間だった・・・。
「ふぅ・・・暑い・・・」
夏の終わりの日差しは更に私を攻め立てる。
ふと気付くといつの間に来たのか知らないが、背広を着た男が汗を流して立っていた。
私の横で「その見知らぬ男」が懐中時計を気にしながらボソっと呟く・・・。
「あぁ・・・まるで『時間』が壊れたみたいだ・・・。」
『時間』が壊れる?
この男の言う事は可笑しくは無いだろうか?
時計を見つめて言うのであれば「時計が壊れる」が正しい表現でしょ・・・?
暇つぶしにちょっと考えてみる・・・。
「誰かを待つ・・・」
「時間を気にする・・・」
「時計の針が、なかなか動かない・・・」
「1秒を刻む針の感覚が長く感じる・・・」
「でも、周りの人々は普通に活動している・・・」
あぁ、納得だわ・・・
この人の待ち人はきっと「恋人」・・・。
焦がれた気持ちを押さえ切れずに『時間』に文句を付けたんだ・・・。
「お待たせ〜〜〜〜っ!!!待たせちゃったカナ??」
「あ・?全然待ってないよッ?僕も今来たところさッ!!」
遅れてきた彼女に対して男の白々しい言葉・・・。
さっき男の呟いた言葉を彼女に聞かせたら・・・きっと彼女はニヤニヤして喜ぶのだろう・・・。
二人は腕を組んでドルロレの町を歩いていった・・・。
あんな幸せそうなカップルを見ていると彼氏のいない自分が寂しくなるときがある・・・。
なのにも関わらず、今日まで実際に彼氏を作りたいという気持ちにはならなかった・・・。
?
何故だろう・・・? と考えてみても・・・どうにも出てこない答え・・・。
まぁ、今こんな事を考える必要も無いのかも・・・。
ふと、自分も懐中時計を見つめてみる・・・。
時間は当然の事ながら、普通に流れていた。
「ふふふ・・・あ、ありえない・・・ッ!!!」
さっきの男の発言がどうにも頭から離れなくて自分と比較したが・・・有り得なさ過ぎる。
テリィを待って時間が長く感じるなんて・・・。
時間は残り3分・・・。
テリィの事だからどうせ「時間ピッタリ」に現れるに違いない。
そんな思いで私はいながら目を瞑り、「ポーチ」からハンカチを取り出す。白い帽子を脱いで汗を拭った・・・。
「ふぅ・・・今日は本当に暑い・・・」
溜め息を付いて再度、街を見渡す。
先程までいた日傘を差した奥様達は家に帰った様で、人が疎ら(まばら)になっている。
ふと、建物の影が濃く見えるこの風景に一匹の「シーポン」が砂漠を漂う様に浮遊しているのを見つけた。
シーポン「 ヾ(´Д`;=;´Д`)つ 」
キョロキョロと辺りを窺いながら浮遊するシーポン。
時たま女性の方へと近づいては離れていく・・・。
その様子は誰かを探しているようで行き交う「若い女性」を見つめては近づき、ショゲながら離れていく。
ビート「飼い主とはぐれたのかな・・・?」
シーポン「 Σ(´Д`;)!! 」
シーポンがこちらに気付いた様だ。
この事から解かるように私はとっても若い事が立証できた訳だ。
ちょっと嬉しいかも?
でもでも、このシーポンは私に近づいても・・・きっと他の人に見せた時と同じ様にショゲながら離れていくんだろう。
シーポン「 Σ(´Д`;)シ!? ・・・・・・・・εεεε(;つД`)つ・・・」
悲しそうな顔で私を見つめ、離れていく。
当然・・・
だって、私は飼い主じゃないもん・・・。
いつもだったら一緒に飼い主を探してあげる所だけど・・・今、待ち合わせをしてるの・・・。
可哀想だけど頑張って自分で見つけてね・・・?シーポンちゃん・・・。
「そうだ!!そろそろテリィも来るはずだ・・・。」
ポーチに入れていた懐中時計をサッと取りだして蓋を開ける。
シーポン「 (´Д`;) 」
ビート「・・・・・・・・・・」
懐中時計の代わりにシーポンの顔がドアップで視界に入る・・・。
私の顔を覗き込んで大きく首を傾げるシーポン・・・。
よっぽど私と飼い主が似ている様ね・・・。
シーポン「 ジーーーー(´Д`;) 」
私を見つめ続けるシーポン・・・。
そう・・・
そんなに似てるの??私と飼い主さん・・・・
だとしたら・・・・
その飼い主さんはきっと・・・・
きっと私と一緒でとっても『美人』なのねッッ!!(*ノ▽ノ)
シーポン「 ・・・・ (´Д`;) 」
無言で汗を垂らして見つめ続けるシーポン・・・。飼い主さんは本気な話、どんな人なんだろう?
ビート「ふふふ・・・シーポンちゃん?飼い主さんと私はそんなに似てるの?」
シーポン「 Σ(゚д゚;ノ)ノ!! 」
私の声を聞いて驚きの表情が出た。きっと飼い主の声と違うから驚いたんだわ・・・。
まぁ、言ってなんだけど私の声は「歌手」になれる程イイ声だもんね〜〜〜。
シーポンちゃんもこれで私から離れていくわ・・・。
ふと、もう一度懐中時計の針を見ようとする。
シーポン「 (´▽`) 」
ちょっと・・・
私の声を聞いて離れないってどういう了見なのかしら・・・?
それとも私と一緒で飼い主さんも「美声」って訳??
シーポン「ガシ!!!・゜・(mД`)m・゜・。」
ビート「ん、んなッ!?」
あまりに突然でビックリ!!抱きついてきたシーポンちゃん!!
ちょっと!?シーポンちゃん!??私はあなたの飼い主じゃないんだってばッ!!
シーポン「シクシク!!!・゜・(つД`)m・゜・。」
よく見るとこのシーポンちゃん・・・とっても汚れているわ・・・。
飼い主さんと何日も前にハグレたのかなぁ・・・?体もボロボロだし、何かに襲われたのかしら?
背中に大きな傷跡もある・・・。
ビート「ちょっと待ってね・・・?ん〜〜〜〜よっと!!!」
『 『 『 『 !!!!Σ(*´▽`*)シ!!!! 』 』 』 』
指を振ると柔かい光がシーポンを包み込む・・・。私の回復魔法はシーポンにも例外なく特効なのョ?
ビート「どう?これで傷も完治したでしょ?」
シーポン「 ヾ(ヾ´▽`)〜〜〜(´▽`ノ)ノ 」
ふふふ・・・嬉しそうに飛び回っちゃって・・・
流石に背中の古傷までは消すことが出来なかったけど・・・よっぽど嬉しかったのね?
こういう表情を見る時が「医療」に携わっていて良かったと思う瞬間だわ・・・。
思えば「白衣」を普段から着ているから、いつも着る服まで「白」を選ぶようになったのよね。
今、来ている服も見ての通り『純白』で・・・・
って・・・・・
ビート「キャーーーーーーーーッ!!!!!!!!! 」
シーポン「 ΣΣ(゜Д゜;)!?? 」
なに!?ど、どういうこと!?
私の自慢の一張羅・・・「白いワンピース」が・・・・・
『ものっそい汚れてる』じゃないの!!?
なんで胸元に・・・こんなに「黒い跡」がッ!?
なんでッ!?な、なんでなのよッッ!?
シーポン「 ヾ(´Д`;)? 」
私の奇声に驚いたシーポンちゃんが心配そうに私の顔を覗き込む・・・。
でも、ごめん!!い、今、それどころじゃないの!!
ビート「いつの間に?こんなに汚れて・・・って・・・・エッ・・・?」
シーポン「 ヾ(´Д`;)シ・・・・・ 」
ゆっくりと胸元の方へ近寄ってくる・・・。
よく見ると・・・そうよね? この黒い跡・・・。シーポンちゃんの顔に似ていない・・・??
今のシーポンちゃんと・・・まるで「鏡」みたいにこの「黒い跡」、瓜二つだよ・・・。
シーポン「 ・・・Σ(゜Д゜;)・・・ 」
ビート「ひ、ひどいよッ!!私の大事なワンピースがぁぁ〜〜〜〜ッ!!」
虚脱!!
あぁ!!もうッ!!ありえないッ!!
可哀想だと思って「治療」までしてあげたのにッ!!魚拓ならぬ「シーポン拓」が私の白いワンピースにッ!?
ジトっとした目でシーポンちゃんを見てしまう。
シーポン「 m(。.。;)m 」
申し訳なさそうに身を小さくして私の足元に近寄ってくるけど・・・
ダメッ!!許さないよ!?
シーポン「 ・゜・(つД`)・゜・。 」
な、泣いたって許さないよッ!!??
だって今日は大切な日なのよッ!!
5年ぶりにアイツに会うっていうのに・・・・
ビート「エッ・・・・?」
ふと我に返る・・・。
そう!今、私は待ち合わせをしているのだ。
シーポンちゃんに邪魔されたから、ついつい時間を忘れてたけど、テリィとの待ち合わせ。
ワンピースの汚れも忘れて「懐中時計」の蓋を開けた私の目が・・・
大きく開く。
ビート「エッ・・・?ど、どういう事・・・?じゅ、10時23分・・・?」
思わず右を見る。
しかし、そこにテリィの姿は見えない・・・。
慌てて左を見る。
でも、そこにテリィの姿は見えない・・・。
シーポン「 ・・(´Д`;=;´Д`)・・・・ 」
円を描いて作られた噴水は中央から水が噴き出して反対側が見えない・・・。
私は急いで噴水の「逆側」へと走った・・・。
シーポン「 Σ(´Д`;)シ 」
いない・・・
いない・・・・・
いない!いない!いない!いない!いない!いない!!!!
何処にもテリィの姿が見えないッ!!
日傘を持って歩く女性、帽子を水で濡らしてる少年・・・。
建物の影・・・街の奥にも人は見えるけど、みんな知らない人ばかり。
露店の人も・・・知らない人ばかり・・・。
シーポン「 ハァハァ(´Д`;) 」
慌てて私の跡をつけてきたシーポンちゃんが息を荒げて私の顔を覗き込む・・・。
ダラダラと流れる汗・・・。
荒ぐ吐息・・・。
締付けられる心・・・。
シーポン「 ΣΣ(゜Д゜;)!! 」
思わず流れる涙・・・。
ビート「ッ!!」
両目を手の平で擦る様にゴシゴシとこすり付け、涙を拭う・・・。
不覚だった。涙が出るなんて・・・。
シーポン「 ・・・・ (;´Д`)つ 」
ソッとシーポンの手が肩に乗るのが判る。
心配して元気付けてくれてるんだね・・・。
ビート「あ、あははははは・・・・だ、大丈夫だよ?シーポンちゃん? 」
シーポン「 ??(´Д`;=;´Д`)?? 」
そんなに心配そうな顔をしないで・・・。
もしかしたら・・・そうだ!!時間を間違えてるかもしれないじゃない!!
10時って言ったのに「11時」と間違えてるかもしれない!!
ビート「あ、汗が目に入っただけなの!だから、シーポンちゃんがそんなに心配しなくっても大丈夫だから!!」
シーポン「 Σ(*´▽`*)シ 」
安心したシーポンが私の周りを飛び回る・・・。
でも、実際問題テリィは大馬鹿だ!!わ、私を心配させるなんて最低にも程がある。
時間は10時30分。
幸い、シーポンちゃんに汚された服を綺麗にしたいから噴水の水で洗って待っててあげよう!!
この炎天下だから水で洗ってもすぐに乾くし、11時には流石のテリィも噴水前には来るだろう・・・。
しかし、約束だけは守る奴だと思っていたけど・・・タダのチャランポランだったか・・・。
そんなテリィを待つなんて・・・ビートちゃんってば、本当に気が長いのだ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・
長い・・・・・
服を洗うのに掛かった時間は5分・・・。
11時までの残りの時間は25分なのに・・・
すごく長い・・・・
家や「仕事場」で過ごす25分なんて「光」の様にアッという間に過ぎるのに・・・
長過ぎる・・・。
時計を見つめるけど・・・
別に恋焦がれているわけじゃないけど、さっき言っていた「男の人」の言う事がよく解かる。
まるで時間が壊れたみたいに「ゆっくり進む」・・・。
待たされるのって凄く不愉快な気分だわ・・・。それを我慢して待たなきゃいけない・・・。
イライラしているのがシーポンちゃんには判ったのか、またもや心配そうに私の顔を覗き込んできた・・・。
ビート「あ・・・ご、ごめんね? 私、あなたの飼い主さんを一緒に探してあげたいけど・・・待ち合わせをしてるから・・・。」
シーポン「 (´Д`;=;´Д`) 」
顔を横に振るって・・・どうして・・・?
あなたみたいに「お利口」なシーポンちゃんなら、私が飼い主さんじゃないって判ってるよね?
それとも、迷いシーポンじゃなくて・・・野良シーポン???
シーポン「 ドシ! εヾ(*`Д´)シ 」
私の横に座って街を眺めるシーポンちゃん・・・。
そっか、私に付き合ってくれるのね?あなたが一緒に居てくれたら、私も退屈しなくて済みそう・・・。
ビート「ありがとうね・・・?シーポンちゃん?」
シーポン「 (*´−`*) 」
そっと優しくシーポンの頭を撫でる・・・。
この炎天下で帽子も無しじゃ可哀想だよね?
ポーチにハンカチがあるから噴水の水で濡らして頭に乗せて上げよう。
そうこうしている内に・・・・
アイツが来るはずだしね・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
時間は・・・・・・
11時48分・・・・・
シーポン「 ・゜・。(;つД`)つ・゜・。」
ビート「大丈夫だよ・・・もうすぐ・・・来るはずだもん・・・アイツ・・・馬鹿だから壊れた時計持って歩いてるんだよ・・・」
炎天下の日差しは正午を間近に頂点に昇り詰める・・・。
気温は37度、湿度39度・・・・空に雲は只の一つも無い快晴・・・。
ビート「シーポンちゃんは、もう・・・付き合わなくっていいョ?はやく「おうち」に帰って・・・」
シーポン「 ・゜・(つД`)つ・゜・。 」
泣きながら私の服を引っ張るシーポンちゃん・・・。
その姿が少し霞み掛かってくる・・・。
まずい・・・これ・・・日射病だよね・・・
でも・・・ここを離れたら、すぐにテリィが来るかもしれない・・・
へばる様にベンチに座り込む私・・・。
シーポンちゃんは1時間以上前から私の服の袖を持って首を横に振る・・・・。
シーポン「 (TДT;=;TДT)つ 」
そっか〜〜〜・・・
シーポンちゃんは解かってたんだね?
ずっと首を横に振っていたのは・・・・
『テリィはここには来ない』っていう事だったんだ・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第2話に続く・・・