題名 : 壊れた時間の先に・・・

第8話 「日曜日 午前、?:??」






『汝、我を求めるか・・・?』






初めて「ヤツ」を手にしたのは9歳の時だった・・・。






国家ドルロレ最北端、辺境の街『シルバーズ・スノゥ』

一年の内7ヶ月という期間、雪が辺りを包み込む自然の多い美しく小さな街・・・。


そんな小さな街の一角に俺、テリィの住む家が建っている。

トレジャーハンターだった親父「セイル」は家の地下室に多くの「宝」を保存していた。

金銀に輝く王冠や微細な加工が施された刀剣。

多種多様な呪文書の他、金属を物理的に鍛え上げる事ができる「真輝の術書」。

しかし、そんな数々の美しい宝の中で唯一つ、禍々しい光を放つ剣が鎖と封印呪符を巻きつけられ放置されていた。


俺の親父曰く、「この『闇の剣』は名も無き魔剣・・・。

弱者が使っても鉄ですら軽々と切裂けるが使おうものなら「命」を奪われる・・・。」と・・・。







俺の親父はこの剣を握った事は無いと言う・・・。



こんな「魔剣」に力を望まなくても充分に強かったからだ・・・。


数々の罠を掻い潜り、苦難を乗り越えて「宝」を右手に帰ってくる親父・・・。


街の人々は「トレジャーハンター」だった親父を褒め称えた。

母親が幼い頃に死んでしまった俺にとって、唯一の尊敬できる親父だった・・・。




親父が一度、旅に出ると数ヶ月・・・長い時で1年近く帰ってくることは無い・・・。


その間、街の人々は俺の事を都度都度、気に掛けてくれる。


特に俺を大事にしてくれたのは同年の親友hidechiとその両親。

「親父」と接する『時間』が少なかった俺にとって、彼らの事を『家族』の様に思っていた・・・。


俺はその環境に不満を抱く事は無く、むしろ幸せすら感じていた。




そんな幸せな平穏を過ごしていた俺の前に、「災厄」が訪れたのは突然の事だった・・・。


親父が街を出て「1年」と「2ヶ月」が過ぎた頃・・・


季節柄、雪に囲まれている「シルバーズ・スノゥ」。



大型のドラゴンが俺の住む街に攻め入ってきたのだ!!




「すぐに女、子供を避難させろ!!戦える男は武器を持って戦闘準備!!」



「セモンとレダースは門を閉じろ!!ここへの侵入だけは絶対に許すな!!」


街から離れた「避難所代わりの洞窟」に男の声が響き渡る・・・。


「止めて!!もう街を捨てて逃げるべきよ!!」


「ここを捨てて、他に何処へ行けると言うんだ!?」


「もう、みんなここで死んでしまうわ!!!」


「諦めちゃいけない!!俺たちが命を掛けて・・・」


聞こえてくるのは混沌の様に交じり合った怒声、叫声、泣声・・・。


しかし、多くの声が混じった中・・・一人の男が言った言葉を俺が聞き逃す事は無かった・・・。



「セイルさんが生きていたら・・・あんなドラゴン退治してくれるのに・・・」





テリィ「 !? 」




俺の尊敬する親父は今ごろ「宝」を求めて多くの苦難と戦っている筈・・・


なのに、死んでいるってなんなんだ!?




「おいッ!セイルさんの事をそんな風に言うなッ!!」

「やめてよッ!!もうやめて〜〜〜ッ!!」


「1ヶ月で帰るって言ってたのに帰ってこないんだ!!死んだに決まっているだろッ!!」



「ち、違う!!この洞窟に・・・テリィくんがいるんだぞッ!!!」



「 !!!! 」




テリィ「・・・・・」


興奮で忘れていた我を取り戻して青ざめる男・・・。


目に少し涙を浮かべて俺を見る・・・見つめる・・・。


「ち、違うんだ・・・テリィくん・・・」



「・・・・・・・・」



言うな・・・





「き、君のお父さんはね・・・」




うるさい・・・・何も・・・言うなよ・・・・。




「た、ただ・・・れ、連絡が途切れたままで・・・・」



聞きたくないッ!!聞きたくないんだッ!!



テリィ「 ッッ!!! 」




俺は大人達を突き飛ばして走った・・・。


ただ俯き、全力で・・・、




「死」を象徴するドラゴンの暴れている街の中心へ・・・。



少しずつ大きくなる「戦いの雄叫び」・・・。


響く「地鳴り」・・・。









ドラゴンの吐く炎の熱気によって街に包まれた白銀の雪が溶けていく・・・。

熱気に乗って漂ってくる、焦げた匂いに血の臭い・・・。













『汝、我に命を捧げる覚悟はあるか・・・?』











俺は周りに目もくれず自分の家へと入っていった・・・。











『汝、怨敵を討つ力を欲するか・・・?』















地下室への扉を開く・・・











『汝、幾つの怨敵の命を欲する?』











宝物庫の一番奥・・・放置し続けていた「闇の魔剣」・・・。













『我、汝に「三度(みたび)の絶大」を授ける剣・・・。』

















何もかもを無くした俺が・・・











『但し、忘れる事無かれ・・・。』












一番に欲したもの・・・。














『汝の果てに待つのは『魂の消滅』・・・。』














それは・・・・

















『汝、・・・』

















「力」だった・・・。













『我に『喰われる運命(さだめ)』なり・・・。』












・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・









・・・・・・・・・・・・・・












途切れる記憶の中に僅かに伝わる『鋼鉄』を斬る感触・・・。


命を燃やし尽くす『焔』を避ける動き・・・。






俺は今、戦っている・・・。







戦っている・・・?







何と俺は戦っているのだろう?





目の前は「闇」が包み、視覚は機能していない・・・。





嗅ぎ慣れた「雪」の匂いはおろか、先程まで嗅ぐってきた「血の臭い」も消えている・・・。



嗅覚も機能していない?




感じ取る事ができるのは『鋼鉄』を切裂く感覚と唸り続ける何かの咆哮だけだった・・・。




・・・・・・・・・・・・






その咆哮はいつしか止んでいた。




時間にして数分・・・?



気付くと俺の視界に見慣れた風景・・・。



いつ帰ってくるかもわからない親父を待ち続けて座っていた、遠くを見つめる事ができる丘・・・。


吹き抜ける風に身を任せて遠くを眺める・・・。



体は意味不明の倦怠感に潰れそうになっているが、それを超える『爽快感』が俺を包む・・・。



俺は何をしていたのだろう・・・?


俺は今、何も持っていない・・・。




虚ろに俯く俺に話し掛けてきたのは、親友hidechiだった・・・。





hidechi「おい!!大丈夫か!?テリィ!!」



安堵の後、目を輝かせて俺を見つめる・・・。


なんでhidechiが俺をそんな目で見つめるんだ?


hidechi「いきなり街へ走って行ったから慌てて追いかけてきたけど・・・」



あぁ・・・そうだ・・・俺はドラゴンの暴れる街の中心へ走って・・・



家に『剣』を取りに行ったんだ・・・・。




でも・・・俺・・・・剣なんて・・・・持ってないよな・・・・?










hidechi「やっぱお前はすげぇよ!!!流石はセイルさんの息子だよ!!」



テリィ「・・・・?」



hidechiの言う意味がわからない?


親父がどうとか・・・どういうことだよ??



涙を流して歓喜するhidechiの向こう・・・。




丘の下に見えるのは・・・・




テリィ「ッッ!?」



hidechi「ここに俺が来た時、既にドラゴンを倒しちまってるなんて・・・すげぇよ!!テリィッ!!」



無残に千斬られたドラゴンの肉片が辺りに散ばっていた・・・。



ドラゴンのドス黒い血・・・。


それは嗅いだ事の無い「腐臭」・・・。



辺りの民家はドラゴンに襲撃された為に大きな傷跡が付き、そのドラゴンに挑んだ大人の死体も数体転がっている。


今、始めて見る惨劇に身が凍っていく・・・。



hidechi「みんなに報告しよう!!ドラゴンを倒したって・・・」




テリィ「あ・・あ・・・・」


頭の中が混乱のまま、hidechiに手を引かれて丘を下る・・・。




しかし、時間が経てば経つほど、俺の中の『爽快感』は消えていき『倦怠感』のみが支配していく・・・。




テリィ「す、すまない・・・hidechi。俺、体が・・・」


hidechiの走るスピードに着いて行けず、半膝を付く。


倦怠感に加え、吐気までが襲い掛かってくる・・・。


い、いったいなんでなんだ??


hidechi「だ、大丈夫なのか?テリィ?だけど、確かにあんなデカイドラゴンを倒した後だもんな・・・。

ここでゆっくり休んでろよ?」


言ってhidechiは避難所代わりの洞窟へと走っていく・・・。


『汝、忘れる事無かれ・・・。』




テリィ「な、何ッ!?何の・・・声!?」



重い声が俺の中に響き渡る・・・。

この声は・・・


『我、一度(ひとたび)の絶大を与えけり・・・。』



俺が「魔剣の封印」を解いた時に聞こえた声・・・。




『その証、汝の背に刻む・・・。』



テリィ「 グッ!?」



瞬間、俺の背に大きな衝撃が与えられた!!



何が俺の背に当たったのか?



『痛み』を超えた『熱さ』に涙が溢れ返り・・・・





テリィ「グァァーーーーーーーーーーーッ!!」


悲鳴をあげる・・・。




テリィ「な、なにが・・・い、いったい・・・なんで・・・?」


理解不能の現象・・・。

背の肉を裂かれた痛みが熱さとなり、身を蝕んでいく・・・。


溢れ返り、ほとばしる自分の血・・・。


だが、その自分の血で熱さが冷やされる・・・。


そしてこの日、二度目の失神が俺を襲った・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・








・・・・・・・・・・・・・・・・・










・・・・・・・・・・・




『汝に与える「絶大」は残り二度(ふたたび)・・・』






テリィ「な、何者なんだ!?お前はッ!?」






『我は名も無き「闇の剣」・・・。汝に「絶大」を与える「魔剣」なり・・・。』






テリィ「さ、さっき・・・俺の「命」を捧げろって言ってなかったか!?」





『我、汝の望む「欲」を与え、「代償」を得る・・・。ゆえに「魔剣」なり・・・。』





テリィ「お、俺は・・・俺は二度とお前を使わないからなッ!!お前なんかに・・・命を奪われてたまるかッ!!」





『汝、望むならそれも良い・・・但し・・・』








テリィ「・・・な、なんだよ・・・但しって・・・?」














・・・・・・・・・










テリィ「・・・おいッ!!!なんだよ・・・但しってッ!?」










・・・・・・・・・・・・・・





・・・・・・・・・・



hidechi「おぃッ!!大丈夫だったか!?テリィッ!!」



hidechiが俺の身を案じて体を揺する・・・。



暖かいベッドに寝かされ、あの日から1週間の時間が流れていた・・・。



hidechiの母「テリィくん!!目が覚めたのねッ!!よかったわッ!!」


hidechiの父「そりゃぁセイルさんの息子だもんなッ!!こんな所で死ぬわけが無いッ!!」


hidechi「俺、街のみんなにテリィが気付いたって言ってくるよッ!!」



満面の笑顔でhidechiが部屋から駆け出していく・・・。


どうやら俺が気を失っている間、街のみんなが無事を案じてくれていたようだ・・・。


ベッドの周りには多くの見舞いの品が置かれ、

足の踏み場にも困るほど・・・。

hidechiの母「テリィ・・・本当にありがとうね。」


hidechiの父「あぁ!!君がドラゴンを退治してくれたお陰で、この街は救われたよ。」

hidechiの両親は笑顔で今の街の状況を教えてくれた。


おれはどうやら『ドラゴンを退治した英雄』として街のみんなに感謝されているらしい・・・。


街のみんなが喜んでくれているなら、俺にとってこれほど嬉しい事はない。


だが、いくら思い返してもドラゴンとの死闘を思い出せないぞ・・・??


気ダルさを感じながらも・・・

ふと、ベッドから起き上がると背中に鈍痛を覚える・・・。

痛さに眉を歪めながら背中に手を伸ばすと、そこには竜の爪で掻かれた様な大きな傷跡の感触・・・。





hidechiの母「お医者様に『回復魔法』を掛けて貰ったけど、どうしてもその傷だけは消せないらしくて傷跡が残ってしまったらしいわ・・・。」


ベッド際、hidechiの母親が心配そうに話し掛ける。

hidechiの父「『名誉の負傷』とはいえ、その傷はあまりに酷い!良い医者を呼んで必ず完治させてやるからな・・・。」



テリィ「・・・・・・・」


hidechiの父親はこの傷が『ドラゴンに付けられた物』と思っているようだが、俺は覚えている・・・。

この傷は『ドラゴンの死体』を見た後、突然に付けられた物・・・。

背に残る鈍痛は治まる事が無く、俺の体を蝕んでいる。


コイツは俺の頭の中で話し掛けてきた『ヤツの仕業』に違いない!



だが、ドラゴンを退治できた代償と思えばこのくらいの傷は・・・何でもないのかも知れない・・・。


考え方によっては「村人全滅」の可能性もあった訳だ・・・。



幸いドラゴンなんて「大型モンスター」はポコポコ出てくる様な魔物ではないし、「ヤツ」を使う事ももう無いだろう・・・。





hidechi「お〜〜〜い!!テリィ!!??」




むっ!?街の人をもう呼んできたのか??

ベッドから起き上がって間無しなのにhidechiの声?

慌てふためいた声を上げてどうしたんだ??



普段着の「皮の服」に着替えて外に出てみると街中の人たちに加えて、

宝石を散りばめた「金の鎧」を着け、青いマントを靡かせた騎士とその連れらしき兵士が数人背後に立っている?



誰だこの人たち?こんな人たち、この街で見たこと無いぞ??




テリィ「あ、あなたは・・・?」


しげしげと見つめる金の鎧の騎士は俺の質問を聞き、ふと我に返る・・・。


クロノス「あ・・・あぁ・・いや、初めましてテリィくん・・・。私はドルロレ国家管理機関のクロノスというものなんだが・・・」



少し汗を垂らして俺に握手を求めるクロノスさん・・・。


しかし何だ?この違和感は??街の大人達は笑顔なのにこの人たちだけ妙に落ち着きが無い??



兵士1「こ、こんな少年が・・・?」


兵士2「あぁ・・・何でも一人で・・・」



クロノス「ご、ゴホン・・・あ・・・えーーーと・・・・」



兵士たちの内緒話に咳払いし、話題を切り出すクロノスさんは眉をしかめて問いかけてきた・・・。




クロノス「テリィくん、先日君は「ドラゴン」を退治したらしいね?」


テリィ「あ・・・えと・・・」


退治したらしいね?などと聞かれても肝心の俺にその記憶が無いのだからなんと答えて良いかわからない。



魔剣を使った・・・といえばそれまでなのかも知れないが「国家関係」の人たち相手にそれを言うのは少し気が引ける・・・。




『聖剣の力』と言えば聞こえはいいが「魔剣」とあっては・・・ねぇ?




クロノス「正直に答えてくれないか?ほ、本当に君が『ドラゴン退治』を全うしたのかい?」




クロノスさんの言葉にスッと顔を下げ、少し考え込む・・・。

『魔剣』の事を黙っていても俺的には意味ないし・・・

使う度に「命を削られる剣」なんて持っていたくもないし使いたくも無い・・・。


ここはひとつ、正直に・・・


テリィ「実は・・・」



街の人1「おぃッ!!黙って聞いていたらさっきっからなんなんだッ!!!」




テリィ「 ・・・えっ!?」



街の人2「そうだ!!彼は俺たちの街を命がけで守ってくれた『英雄』なんだぞッ!?」



クロノス「い、いや・・・それは分かっていますが・・・」



hidechiの母「そうよ!彼はとんでもない大怪我を背中に受けてまで私たちを守ってくれたのよッ!!そ、それなのに・・・それなのにぃぃッ・・・」



ぐぉっ!?ひ、hidechiのお母さんが泣き始めたッ!?


それに、街の人たちが妙に殺気立ってると言うか・・・?お、俺を庇ってくれてるつもりなのか??



兵士3「い、いや・・・クロノス様は事の真偽をだな・・・」


hidechi「なんだよッ!!まだ信じられないならッ!!これを見ろよッッ!!!」




と言って、hidechiは俺の方に向かって意気揚々と俺の服を・・・?



テリィ「うぉいッ!?hidechiッ!!や、止めろよッ!??」



な、何してんのッ!hidechiッ!?俺の服・・・公衆の面前で脱がすなよッ!!?




と言っても、とき既に遅し・・・俺の上半身は街の人達に晒されてしまった・・・。



街の人4「うぁッ!?は、始めて見るが・・・ここまで痛々しいなんて・・・」



兵士4「こ、こんな大きな『爪あと』・・・見たことが無いッ!!」



クロノス「なんと言う事だ・・・君は・・・こんなに小さな体で・・・本当にドラゴンと戦ったのだね・・・。」




ハッ・・・?い、いやいや・・・だから俺は今から説明を・・・





兵士5「クロノス様・・・これは『決定』ですねッ!!」


クロノス「あぁ!!これほどの『英雄』が嘘偽りを付く筈も無いッ!!!」




テリィ「あ・・・あの・・・?」



なんなんだ?この人達・・・?妙にテンションが高くなるのが早いって言うか・・・?馬鹿っぽいと言うか・・・?


いやいやいやいやッ!?・・・コブシにそんな力入れて、涙を流々と流さなくってもッッ・・・!?


いまいち、この人達がここへ何をしに来たのかが読み取れない・・・。


クロノスさんは懐から一枚の紙切れを取り出した・・・。


上羊皮紙に金模様が付けられた豪華な『賞状』みたいな・・・?


なんなんだろう?これ??



クロノス「実は私は君に『二つ名』を進呈しに来た者なんだよ・・・。」

テリィ「ふ、『二つ名』・・・?」



hidechiの父「国家に大きく貢献した者のみが得ることができる『通り名』の事だよ。

ドルロレのみならず『国外』においても、その効力を発揮する『権限』を得ることができる。」


テリィ「け、権限ッ!?」


クロノス「詳しく言えば毎月、国から助成金として「250,000ドニア」が君に渡される。そして『男爵相当の超法権限』が君に与えられるのだよ。」


hidechiの父「超法権限とは「止む無く法律を破らなければいけない時、懲罰免除」となる特例ですな・・・。」


クロノスさんがコクッと頷く・・・。


むむむッ??それは『タダでお金を貰える上に、男爵と同じ権力を持てる』と言うことですか??




そ、それって『超ラッキー』じゃねぇッ!?


何もしなくて『お金』貰えるなんて・・・しかも250,000ドニアって言ったらアイスクリームが25,000個分ッ!!!

オムライスにして2,500個分じゃんッ!!


クロノス「受けてもらえるかな?小さな『英雄』さん?」


にこやかに再度、握手を求められる・・・。


テリィ「も、もちろんですッ!!もちろんですともッッッッッッッッッ!!!!」





ここまで上質のお話、こんな片田舎までわざわざ持ってきてくれてありがとうございますッ!!

あなたに感謝しても感謝し切れませんよッ!!!クロノスさんッ!!


あぁ・・・一時は魔剣を使用してどうしたものか・・・なんて思ったけど・・・


これはこれで結構、運が・・・もしかして「ツイテル」ってやつッ!?



クロノス「ただ、今回のように「大型の魔物」が発生した時には速やかに徴集に応じて貰わなければいけなくなるがね・・・。」




テリィ「・・・・・えっ?それって・・・今回みたいに『ドラゴン』とか出てきたら・・・また戦わないといけないって事・・・?」


クロノス「あぁ!!その通りだよ!!」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・・・・・





きゃっ・・・却下だろッ!!それはぁ〜〜〜ァッ!!!



お、俺自身、「力」なんて持ってないのにこれ以上「命」を削ってたまるもんかッ!!!



hidechi「よかったなッ!!テリィッ!!9歳で『英雄』の仲間入りなんてすげぇょッ!!!」



テリィ「い、いや・・・ちょっと待てッ!?お、俺は・・・」


hidechiの父「みんなッ!!シルバーズ・スノゥから『英雄』が誕生したぞ〜〜〜〜ッ!!!!」



テリィ「い、いやいや・・・だからちょっとッ・・・!?」


街のみんな「うぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」



テリィ「おいッ!!・・・だからみんなッ・・・!?」





えっ!?えぇぇっっ!?俺の話を聞く耳持たずに・・・ま、街のみんながめちゃくちゃ喜んでるッ!?!?



お、おれ・・・そ・・そんな・・・よ、喜ぶなよッ!?みんなッ!?!?




クロノス「え〜〜〜〜では、テリィ少年の栄光を称え・・・」



テリィ「あ、あのですねッ!!い、今・・・」


今、説明するからチョット待てよッ!!


か、勝手に称えるなよッ!?!?


称えるなよッ!?!?





クロノス「今、ここに『二つ名』の進呈を完了とするッ!!!!!!!」



テリィ「う・・・うぉぉ〜〜〜〜〜〜ッ!?」




か、完了するなよ〜〜〜〜〜ッ!?





hidechiの母「二つ名は何がいいかしら・・・?みんなで決めてあげましょうよ?」




テリィ「えっ!?えっ!!?ふ・・・二つ名って・・・・」




hidechi「白銀の雪が積もる街の勇者だよ?テリィはッ!!『白銀の勇者』で決定さっ!!!」





決定ェェェ〜〜〜〜するなよぉ〜〜〜〜〜〜〜ッ!?






街のみんな「白銀の勇者かッ!!それはいい「二つ名」だ・・・。」



クロノス「うむ・・・では『白銀の勇者』で登録申請することにしよう・・・。」




申請ェェェ〜〜〜〜するなよぉ〜〜〜〜〜〜〜ッ!?






お、俺の意思とはまったく関係ない方向に物事が動いていく・・・?





そ、そんな・・・おれ、これからどうすれば・・・・?





  !!!!!!!!





あ、あの時の「ヤツ」の声が今になって思い返される・・・・。







「ヤツ」は最後・・・確かに・・・言っていた・・・・・・。








まるで・・・こうなる事が分かっていたみたいに・・・






確かに・・・言っていた・・・・・・。

















『汝が我を・・・望むであろう・・・。』










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・










・・・・・・・・・・・・・・







???「お〜〜〜〜い??」







・・・・・・・・・・・・・











???「お〜〜〜〜いってば〜〜〜〜??」











だ、誰だ?・・・誰が俺を・・・呼んでいる・・・?







???「もう朝だよ?そろそろ起きて〜〜〜・・・てりりッ!!」



この声・・・








あぁ・・・そうだ・・・








俺は・・・・





???「おはよっ!よく眠れた?今日もお日様はしっかり上がってるよ?暑くなりそうな一日だね?☆」




目の前に映る白いワンピース・・・。その純白よりも清く美しい一目惚れの女性の笑顔・・・。

優しく俺の頭を撫でてくれる・・・。


あまりに清純で汚れのない笑顔は、まだまだ「あどけなさ」を感じもする・・・。



クッションの上で眠っていた俺を抱き上げ、手に持っていた柔らかい布で顔を拭いてくれると・・・



ビート「はいっ!!これで顔も綺麗になったッ☆ 早く起こしてゴメンね?てりり・・・。」







お姉さんっぽく話しかけ、俺を胸に抱く・・・。





そうだ・・・






俺は今・・・









「白銀の勇者、テリィ」じゃない・・・。



何の力も持っていない・・・無力な小翼竜シーポン、てりりだ・・・。



『龍深の洞窟』で「ルーンドラゴン」を倒した時、『断末魔の呪い』を掛けられてシーポンの姿に・・・。


ビート「じ、実は今日・・・ちょっと用事が出来ちゃってね〜〜〜。」


物置をガサゴソしながら俺に話しかける・・・。


深夜遅くにアパートに帰ってきたから昨日の事を聞きそびれて寝ちまった・・・。


昨日、ビートはアレからどうしたんだろう?

結局、チェリーも店には居なかったから状況がよく分からない・・・。


ビート「え・・え〜〜〜と・・・確かここに『マナの水』が・・・・」


物置の中、ガサゴソと探しているのは『回復薬』の様だが・・・ビートの後姿を見る度に悲しみが溢れかえってくる・・・。



通常のドラゴンとしか戦った事がない俺は『ルーンドラゴンの性質』を全く理解していなかった・・・。


『断末魔の呪い』なんて普通じゃあり得ないのに・・・


最後の最後・・・物の見事に『呪い』に掛かっちまった・・・。



ビート・・・。



俺、シーポンになっちまったんだ・・・。





ビート「てりり・・・わ、悪いんだけど・・・今日は一人で『お留守番』できるかなぁ!?」




??



『留守番』!?



いつも一緒に行動しているのに、なんで今日に限って『留守番』なんだよ??




体力、魔力の回復薬や特殊アイテム類をビートが『大きなかばん』に詰め込み、テーブルの方へ歩いていくと見慣れたマップを取り上げる。


んっ!?そのマップ・・・どこかで見た様な・・・?



ビート「えっとね・・・ちょっとこの『龍深の洞窟』って言う所に行ってくるだけだから〜〜〜・・・・」






『 『 『 『 !!!!!!!! 』 』 』 』







な、なんでお前がそのマップを持ってるんだよ!?ビートッ!?

そのマップは・・・ま、「万が一の時のためにチェリーに渡した」マップじゃねぇかッ!?



あ、あいつッ!!よりにもよって「ビート」にマップを渡すなんてッッッ!!!!





なんの為にチェリーに渡したか解ったもんじゃねぇだろッ!?



ビート「少し寂しいかも知れないけど、お留守番を・・・って・・・・てりりッ!?なんで服を引っ張るのよ!?」




なんで服を引っ張るのよ・・・だと!?あ、当たり前だ!!





『龍深の洞窟』へ行っても、屈強な魔物が控えているだけで誰もいないんだ・・・。

俺をブン殴る事なんて出来ないんだぞ?



ビート「もう!!てりりっ!!!ナーレ村への始発馬車が出発するまで後30分程しかないんだから!!駄々をこねないでッ!!!」



壁に掛けられた時計・・・。

6時15分の針を見た後、ビートは俺を無視して外へと出て行こうとする・・・。



バ、バカな事するなッ!!あの洞窟は「洒落」にならない所なんだッ!!!


お前、『龍深の洞窟の意味』なんて知りもしないくせにッ!!


ビート「んッ!?も、もしかして てりり・・・、私の事、心配してくれてるの?」


俺の顔色を見てビートがそれに感づく。



そりゃそうだよ・・・。『龍深の洞窟』周辺はかなりの手練れの剣士や魔法使いじゃなきゃ近寄れない場所なんだぞ?



そんな危険な場所にお前が行くのを止めない訳がない・・・。



優しいビートの事だ・・・きっと俺の身を案じて・・・



ビート「ん・・・んっとね・・・この洞窟に『テリィ』って馬鹿なヤツが仕事に行ったみたいなんだけど・・・お腹空かして倒れてると思うのね・・・」





「・・・・・・・・・・・・」






い、いやいや・・・お前は「俺が死んでる」とかマイナス思考な考えは持たないのか?



まぁ・・・・




俺が死んでても・・・・




「俺のことが嫌いなお前」は・・・




悲しんでくれる事は無いんだろうけどなぁ・・・・





ビート「あっ!でもね・・・てりり!この前からお話に出てるテリィって結構強くってね・・・

ドラゴンですら、あっという間に倒しちゃうんだよ!!」




・・・・・・・




いやいや・・・流石の俺でも「あっという間」って訳にはいかない・・・。


クロノス様に『二つ名』を貰った後、誰にも剣術を教わる事なんて出来なかったから独学で・・・

それこそ死ぬ程の訓練や修業をしたんだ・・・。

今でこそドラゴン退治を100%一人でやり遂げる事が出来るけど13歳まで勝率は50:50だった・・・。

市販されている通常の剣じゃそれこそ歯が立たないし、一撃一撃に渾身の力を込めないとあっという間に殺される・・・。

ビートが思う程、ドラゴンっていうのは弱い生物じゃないんだぞ・・・?




ビート「だから絶対に魔物なんかに負けたりしてないと思ってるんだ・・・。」



い、いやまぁ・・・負けてはいないけど『引き分け』みたいなもんかなぁ・・・?





ビート「だ、だからね・・・・・」



・・・・?



少し・・・ビートの手が・・・震えてる・・・?


ビート「テリィの所に・・・」




ビートの目をよく見ると・・・




ビート「食べ物・・・届けなきゃ・・・」



目が・・・真っ赤じゃないのか・・・?




もしかして・・・・お前、殆ど眠ってないんじゃないのか???


魔力こそ回復してそうだけど・・・その体調で『アソコ』へ行くって言うのかよッ!?


ビート「ごめん!!もう行くからお留守番を・・・って・・・!!?」


てりり「・・・・・」




俺はもう何も言わないよ・・・ビート。

お前が行く所に・・・ただ最後まで付いていくだけだ・・・。



ビート「私の肩にしがみついて・・・・・どうしても付いてくるって言うの・・・?てりり・・・?」




当然だッ!!お前をそんな危険な所に一人で行かせる事ができるか!!



ビート「ひょっとしたら・・・大変な事になっちゃうかも知れないんだよ・・・?」



心配ないッ!!万が一の時には俺が身を呈してでも守ってやる!!






その俺の表情を見ると・・・・・




ビート「・・・・・・・・・」







ビートが・・・・








CHU・・・ッ・・・・







『 『 『 『 『 !!!!!!????????? 』 』 』 』 』



い、今・・・俺の唇に・・・?


あ・・・あれっ!?






ビート「ありがとう・・・てりり・・・。」





く・・・くち・・・?づけた・・・?






ビート「よしッ!!じゃあ行こう、てりりッ!!モタモタしてたら置いていくわよッ!!!」



頬を赤らめたまま俺はビートに付いてアパートを後にした・・・。



ビート「テリィ・・・今・・・行くからね・・・」


悲痛な表情のビート・・・独り言が聞こえてくる・・・。



『ビートの期待』を裏切った様で心が痛む・・・。



最後の最後にヘマをして、シーポンになっちまった自分が・・・情けねぇ・・・。



ビート「ハァ・・・ハァ・・・」


息を切らせて馬車の停留所へと必死に掛けていくが、今から「フェザー・ビート」を使わないのは魔力を温存するためだろう・・・。

このルートで考えるとナーレ村に着いた後、「アソコ」までフェザー・ビートを使うつもりか?

到着時間はむしろその方が早いかも知れないが、昨日の内にルートを練っていたのか・・・?

もしかして、これから先に起こるかもしれない『戦い』を予想しているのか・・・?




しかし・・・・



『龍深の洞窟』はお前が思っている物よりも・・・過酷な洞窟・・・。


一瞬の油断が「死を招く」魔性の洞窟なんだ・・・。








・・・・・・・・・・・・・







クソッ!!







俺はこんな姿で・・・・・













本当にビートを守りきる事が・・・・













できるのかッ??





                                         第9話に続く