題名:走れ!イデアツーリストのヤスノV


月の出る十六夜、白衣を着た青年と美しい妖精の影が交差する。



ルゥク「君に出会えて・・・僕は夢というものを持てたよ・・・」



草原の息吹の暗い森の奥、白衣を着た青年の指先から

美しく可憐な妖精が羽のように空に舞う。



その妖精は、月明かりを背にして白衣の青年に微笑を見せる。

白衣の青年の掛けている銀縁の眼鏡が月明かりに反射し青白く光る。

眼鏡の向こうに映る妖精の姿は正に天使のようだった。



岩に腰を下ろした白衣の青年は、その美しい天使の舞に心奪われ、

時間が経つのを忘れているようだ。





可憐な天使と化した妖精は軽やかに白衣を着た青年の肩に舞い降りる。




ルゥク「ねぇ、ティアラ・・・。君の夢・・そろそろ教えてよ・・・」



白衣の青年は肩に舞い降りた美しく可憐な妖精に問いかける。




ティアラ「ふふふ・・、私の・・・夢は・・・ね・・」




青年の肩に腰を下ろし、美しく可憐な妖精は夢を語り始める。





白衣を着た青年と美しい妖精の夜はまだ終わらない・・・・・







第2話 笑えない依頼 (ルゥク編)〜前編〜








やすのぶ「はぁ・・はぁ・・・・」






息を切らせてイデアの草原の街道を走るやすのぶ・・・。

血相を変えて、たくさんの町人の間をくぐり抜ける。

決してそのスピードを落とそうとしない。

どうやら、依頼の為に走っているようだった。


やすのぶ「はやく、もっとはやく走らなきゃ・・・」



どうやら時間との勝負らしい・・・。病院の横を抜けて奥の道筋に入ったところに一軒家が

見えてきた。



依頼主がいるのだろうか?


やすのぶ「はぁ、はぁ・・・はぁ・・・、間にあっていてくれ・・・」



一軒家のドアを叩き、息を切らせて家の中に入るやすのぶ。

手には何かしらの荷物を持っている。



やすのぶ「奥さん!!奥さ・・ん!!!!イデ・・アツーリストです!!!」


汗をダラダラと流し、拭う間もなく息を切らせている。一体どれほど重要な依頼だったのか・・・。




新米奥さん「あぁ!!待っていたわ!!」





奥の部屋から出てきたのは、まだ若い女性だった。やすのぶを待ちわびていたように

小走りで駆け寄ってくる。


やすのぶ「これ・・・、依頼の・・パンと・・りんごです。」


新米奥さん「よかった、まだ主人は帰ってきてないの!あなたのおかげよ。」





やすのぶ「いえいえ、旦那さんが帰ってくる前に買ってこないとね。」


胸を強く抑えて息を整えるやすのぶ。どうやら依頼は「パンとりんごを買ってくる事。」

だったらしい。相変わらずショボイやすのぶである。





新米奥さん「これ、報酬の100ドニアよ、またお願いね。」



やすのぶ「ありがとうございます。またイデアツーリストをよろしくです。」



汗を拭き、さわやかな笑顔で応対するやすのぶ。依頼を終えて会社に戻るようだ。






やすのぶ「はぁ、しんどかった・・。あの人、今までメイドさん任せみたいだったけど自分で

買いに行った方が安いのになぁ・・・。」


人の財布を気にしているようだが自分の財布のほうが遥かに厳しい現実を忘れ、能天気に会社へ

やすのぶは戻っていった。








やすのぶ「ただいまぁ〜〜〜。ってあれれ??」


そこには魔法使い風の美しい女性と明らかにキザな探検家風の男が社員用の椅子に座っていた。


今日は社長のおけなは不在のようだ。





やすのぶ「今日はもう仕事は終わったんですか?かすみさん。」


キザな探検家風の男を無視して美しい魔法使い風の女性に話しかけるやすのぶ。


かすみ「えぇ、今日は案外と楽な依頼だったから時間が余っちゃってね。」





魔法使い風の女性。かすみはイデアツーリストの社員である。一般では手に入りそうもない上質

の法衣を身に纏う、清楚な女性である。イデアツーリスト創業時から手腕として活躍するキャリ

アウーマンで、実際にレベル自体も高くやすのぶの尊敬する存在である。

巷では「風の魔女」として知れ渡っているが、魔法以外の「特殊な戦闘法」を用いる事もある人物である。




かすみ「やすのぶくんも相変わらず買い物の依頼?」


くすっと笑いながらやすのぶに冷たいお茶を出してくれるかすみ。


軽く会釈をしてお茶を右手にやすのぶは言った。



やすのぶ「えぇ、僕しかできない大切な依頼ですからね。」




誇らしげに笑うやすのぶを呆れたような目で見て、探検家風の男が口を開いた。




たけやす「お前以外、誰もそんな仕事しねぇよ。」


やすのぶ「何だと!?たけやす!!」





探検家風の男。たけやすも又、イデアツーリストの社員である。やすのぶとは古い付き合いであ

るが、事在るごとにやすのぶとケンカする男である。能力的にはやすのぶより強いのは確かで

あるがはっきり言って「どんぐりの背比べ」。「やすのぶのケンカ仲間」のようなものである。

やすのぶ同様、大した仕事は未だ・・・会社では行っていない・・・。




たけやす「フッ・・・お前はそんなんだからいつまで経っても弱いままなんだよ・・・。」



やすのぶ「買い物して何で弱いままだってんだよ・・・メッチャ走り込んでるんだぞ!!」




根本的に間違っているやすのぶを鼻で笑うたけやす。



たけやす「もうちょっとマトモな依頼を受けさせてもらうように社長に頼めって事だ・・」




やすのぶ「なんだと!!?」




たけやす「あぁ!!お前の相手している場合じゃなかった・・

これから新米配達員がブロンズアッピーに奪われた「騎士からの手紙」を

奪い返しに行かなきゃいけないんでナ・・。」





得意気にやすのぶの肩を叩きニタニタと笑うたけやす。






やすのぶ「なっ!!!ブロンズアッピーだと??お前、勝てるのか??アイツに!?」 


たけやす「はん、当然だろ・・ビッグアッピーもまともに倒せないヤスノVくん・・・。」


やすのぶ「っくっ・・・ビッグアッピーくらい・・・倒せるさ・・・」






悔しそうにお茶をにぎりながら、たけやすを見るやすのぶ。

ブロンズアッピーを倒せると言えない所がやすのぶのつらいところである。





かすみ「いい加減にしなさい、二人共・・・」




二人の会話を聞いて呆れているかすみ。かすみからすれば二人とも大して差はないからである。




やすのぶ「・・・・・・うぅ・・」

少しうつむき加減のやすのぶ。




たけやす「はい、かすみさん。さっさとブロンズアッピーを倒しに行って来ます。」



そういうとイデアツーリストのドアを開けて北を目指して歩いていった。





やすのぶ「なんだよ・・ブロンズアッピーくらい・・・その内に・・」


ちびりちびりとお茶を飲みながら、まだ気にしているやすのぶにかすみが優しく語り掛ける。



かすみ「そうね・・すぐに倒せるようになるわよ。やすのぶくんは、いっぱい走りこんでるんだからあっという間よ?」




やすのぶ「そ、そうですよね・・。そうだょ、あんだけ走りこんでるんだし、すぐですよね。」

少し明るくなってかすみに問いかけるやすのぶ。




かすみ「えぇ・・頑張ってね。期待してるわよ、やすのぶくん。」




やすのぶ「よ〜〜〜し、がんばるぞーーーー!!!!!」





レベルアップに燃えるやすのぶ。しかし、走りこんでも大して強くならないことにはまだ気が

付いていなかった。





かすみ「そうそう、やすのぶくん。」

思い出したように切り出すかすみ。



やすのぶ「なんです?かすみさん??」



かすみ「最近ブルが徒党を組んで「草原の息吹周辺」に夜な夜な現れるらしいわ。」


やすのぶ「ブルが・・・徒党を組んで・・・」







かすみ「えぇ・・なんでも「わるわる団」っていうらしいわ。」




やすのぶ「わ・・・わるわる・・」

言葉に詰まるやすのぶ。





かすみ「そう・・・主だった行動記録を見てみると・・・」




資料を広げて説明しようとするかすみにやすのぶは手を差し出してそれを止めた。




やすのぶ「いや・・いいですよ。悪い事以外、何にもしてなさそうだし・・・。」





引きつった顔を見て、かすみも笑いながら資料を閉じた。

かすみ「えぇ、確かにそうね・・・。でも、力試しにやすのぶくん・・・

倒してきたら?わるわる団。」




やすのぶ「・・・・・・・・!!!!」




びっくりしてかすみに問いかけるやすのぶ。

やすのぶ「えぇ!?勝手にそんなことしていいんですか?」



目を閉じて少し考えこむかすみ

かすみ「確かに・・平のやすのぶくんじゃ・・社長に黙っては・・・マズイか・・ナ?」




やすのぶ「あっ・・おけなさんは今日はどこにいるんですか?」


かすみ「なんかドルロレから観光客が来てて観光案内に行ったみたい・・・

たけやすくんが留守番しててくれたのよ、さっきまで・・・」





会社のホワイトボードには久しぶりの本業のお客がうれしかったのか今日の日付に花丸が書き

込まれているのをやすのぶは見つけた。





やすのぶ「そうだったんですか・・・。んじゃ、とりあえず偵察だけ行って来ますよ・・・。」



笑いながらお茶を飲み干し、茶碗をカウンターに置くやすのぶ。

身支度はそのままにドアを開けて会社を後にした。



かすみ「頑張ってね!!やすのぶくん。」

外まで迎えに出て手を振ってくれるかすみにガッツポーズで答えるやすのぶは、

一路「草原の息吹」を目指した。








草原の息吹は木々が多く育ち、野生動物も多く住む森が存在する。

美しい泉に豊富な自然の恵みが自慢の土地である。








やすのぶ「??ブルなんて全然いないじゃん??」


2〜30分歩き回っているやすのぶ。森の中や草原をブルがいないか調べるが

一向に見つかる気配はない。




やすのぶ「まさか・・・ガセじゃないよなぁ・・・」






ちょっと不安を感じながら泉の方へ歩いていくやすのぶ。

そこでやすのぶは信じられないものを目の当たりにする。





やすのぶ「!!!」

ルゥク「!!!」






泉の前に眼鏡を掛け、白衣を着た青年が岩に座り込んでいた。

その手には美しい妖精の姿が・・・。




やすのぶ「・・・・あ・・ああ・・・ああ」



ルゥク「何でこんなところに・・・・人が・・・」


人目を避けて泉に来ていた白衣の青年の名はルゥク。

その手には可憐な妖精ティアラの姿があった。




ルゥク「・・・(ティアラ、静かにしててね・・・)」

ティアラ「(うん・・・・)」




やすのぶ「あ・・ごめん・・・おれ・・その・・」



ルゥク「何者ですか?あなたは?」

懐にティアラをかばう様に隠すルゥク。




やすのぶ「おっ、オれイデア・・ツーリストのヤスノブトいいまス・・・」




ルゥク「あぁ・・・!!!イデアツーリストの方ですか・・・!!!」

強張った顔に笑顔が戻るルゥク。しかしやすのぶの顔には、まだ緊張は取れなかった。




ルゥク「あなたの会社の方には、それはもうお世話に・・・」

歩いて近づこうとするルゥク。しかし、ルゥクが近寄った分、やすのぶは後ずさりをする。




ルゥク「??・・・あの・・・?」


やすのぶ「おれ、何にも見てないから!!!」



目を向けないように気をつけているみたいだが、明らかに妖精のほうを

チラッチラッと見ているやすのぶ。よく見ると汗も少しかいているようだ。




ルゥク「あ、この子の事ですか?」

懐に隠していた妖精のティアラを出そうとした。



やすのぶ「いいから!!!!見せなくっていいし!!誰にも言わないから!!!!」



ルゥク「あの・・何をそんなに動揺しているんですか・・・・?」




やすのぶの異様な動揺の仕方に少し不振を抱くルゥク・・・。

しかしやすのぶはルゥクから目を逸らしながらこういった。






やすのぶ「おれ、君が着せ替え人形で遊んでたなんて・・・誰にも言わないから!!!」



「・・・・・・・・・・」



ルゥク「ええぇぇえぇ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!????????」

心外な言葉にあわてるルゥク。





やすのぶ「ほんま、言わんし!!誰にも言わんし!!!」


ルゥク「ちょっと待ってくださいよ!!!着せ替え人形ぢゃないですよ!!!」


やすのぶ「難しい年頃ってわかってんねん!!!せやから言わへんって!!!!!」




毎度の如く、どこかの方言になってしまうやすのぶ。

その時、懐の中のティアラが笑い出した。





ティアラ「あははははは!!!!!」






ルゥク「ティアラ・・笑い事じゃないよ・・・」



ティアラ「だって、面白いんですもの・・・ルゥクは根暗っぽいもんね〜〜〜。」



ルゥク「そっ・・・そんな・・・」


眉をしかめて困った顔をするルゥク。




その時、初めてやすのぶの顔から緊張が解けた。


やすのぶ「なっ・・・なんだ・・・そういうことだったのか・・・・。」




ルゥク「ははは・・・ひどいなぁ・・やすのぶさんも・・・」


ティアラ「ルゥクも明るくならなきゃね!」


誤解が解けたようでホッとするルゥク。





さわやかな顔をしてやすのぶはルゥクに話しかけた。






やすのぶ「君・・・・腹話術士だったんだね・・・・」


ルゥク「いや!!!!ちがいますよ!!!!!!!!!!!」

ティアラ「あはははははは!!!!!」






おなかを抱えて笑うティアラ。やすのぶの誤解を解くために10分の時間を要した。






やすのぶ「なんだ・・・妖精だったんだね・・ティアラっていうんだ。」


笑いが止まらないティアラに恥ずかしそうに話すやすのぶ。




ティアラ「ふふふ・・・この世に生を受けてもうすぐ10年になるけど、

初めて着せ替え人形と間違えられたわ・・・。」


ルゥク「いや、僕もびっくりですよ・・・いろんな意味で・・・・」



精一杯誤解を解いていたため少し汗ばんでいるルゥク。



やすのぶ「でもでも、なんでこんなところで話してたの?最近「わるわる団」っていう

ブルの徒党が出没しているからこの辺は危険らしいんだよ・・・?」



ルゥク「えっ・・・?でも・・ブルなんてこの辺には出ないけどなぁ?」



ティアラ「そうよ・・。毎日ここには来るけど・・・ブルは見ないわ・・・。」



二人は顔を見合わせて不思議そうにしている。





どうやら泉周辺にも「わるわる団」は出没しないらしい・・・。



やすのぶ「毎日来てるんだ?たくさんお話しすることあるんだね・・・。」



ルゥク「はは・・えぇ・・まぁ・・・。」


ティアラ「なんか最近は会ってるだけ・・・って感じだけどね・・・。」



やすのぶ「・・・・・・・・?」



やすのぶ「会うだけ??なんかつまらなくないか?会うだけって?」



ルゥク「いいえ・・一緒にいないとその・・・落ち着かないというか・・。」


ティアラ「えへへ・・・」


少し恥ずかしそうにするルゥク。その顔を見て少しうれしそうに微笑むティアラ。




ルゥク「そうだ!!イデアツーリストの方にはいつもお世話になっていて・・」


話題を変えようと必死のルゥク。



やすのぶ「へぇ・・一体誰にお世話に・・・??」



ティアラ「たしか・・「眠傀(みんく)」さん・・・だったよね??」


ルゥク「そうそう!!すごい人だったね・・・。」



やすのぶ「すごい人??眠傀さん??」




やすのぶは眠傀を知らないようだが、れっきとしたイデアツーリストの社員・・・

・・いや、役員である。だが、やすのぶは新米の為、眠傀の事を知らなかった。

彼の事はまた、紹介する事になるだろう・・・。



やすのぶ「すごいって・・・脇毛がボーボーとか・・・?」


やすのぶの頭では「すごい人=脇毛がボーボー」という公式が成り立っているらしい。



ルゥク「いやいやいや・・・。すごく強くって・・仕事が速かったんです。」


ティアラ「脇毛は服でわからなかったけど・・・」


真剣に思い出してくれいてるティアラ。結構ノリのいい妖精である。


ルゥク「この「真実の眼鏡」を作るために「ピュアクリスタル」を調達してくれて・・・

  錬金術師のゴウトさんに作ってきてもらってくれたんです。」



やすのぶ「へぇ〜〜〜・・・眼鏡を・・・」



ルゥクの掛けている銀縁の眼鏡は「真実の眼鏡」。

妖精を見るために必要なアイテムである。




ティアラ「でも、戦士や探検家・・魔法使いの人は眼鏡無しでも私たちが見えるんだから

いいわよねぇ・・・。」

やすのぶの頭の周りを飛び回りながら不思議そうにやすのぶをみるティアラ。




ルゥク「親父が探検家になるのを反対しなかったらこれは必要なかったかもね・・・」


少し寂しそうに泉のほうを向くルゥク。





やすのぶ「・・・・・・・・・」





やすのぶが気になって詳しく話を聞くと、どうやら親に探検家の夢を反対されて

家業である鍛冶屋を継ぐようにずっと言われているらしい。



ルゥク「僕の夢は・・・違う所にあるって親父はわかっているはずなのに・・・」



やすのぶ「まぁ・・・わからん事もないけど・・・鍛冶屋も大変な仕事だしなぁ・・・」



ティアラ「お父さんに反発して鍛冶屋に不向きな白衣を着るようになったのよね・・・」


ルゥクの肩に舞い降りるティアラ。



ルゥク「でも、僕はティアラに出会って本当の夢を見つけたんですよ!!」



手にコブシを作り力強くやすのぶに語りかけてきた。


ルゥク「僕の探検家の夢は本来、見たこともない木々のある所へ行くためのもの・・・。」



やすのぶ「ふむふむ・・・。」


目を閉じ、顎に手をやり話を聞くやすのぶ。

ティアラはルゥクの声が大きくなったのがびっくりしたのか泉のほうへ飛んでいった。


ルゥク「僕は、一流の植物学者になり、イデアをより緑に恵まれた自然あふれる土地にするんです!!」



やすのぶ「ほぇ〜〜〜・・・すごい夢だ・・・。絶対かなえろよ!!!その夢!!!」




尊敬の眼差しでルゥクを見るやすのぶ。




ティアラが泉のほうから飛んで戻ってくる。




ティアラ「ふふふ・・・頑張ってね。ルゥク・・・。」


ルゥク「あぁ、任せてよ!今よりもっとイデアを君の住み易い土地にして見せるからね!!」


ティアラ「えへへ・・・」


ティアラはうれしそうに、やすのぶの方を見る。

そしてティアラは、やすのぶに問いかけた。






ティアラ「ねぇ・・やすのぶさんの夢って何・・・?」





やすのぶ「へっ・・・?俺の夢??」






突然の質問にびっくりするやすのぶ。


恥ずかしそうに人差し指で鼻をこする・・・。




やすのぶ「へへへ・・・こんな事言うのは・・ちょっと恥ずかしいけど・・・」





ティアラ「うんうん・・・なになにっ????」



両手を祈るように組み、目を輝かせてやすのぶの方を見るティアラ。

人の夢というものにすごく興味があるようだった。








やすのぶ「一般商店に売っている肉を買い占めて・・・腹いっぱい、食うことかな・・・。」








ティアラ「・・・・・・」


ルゥク「・・・・・・」


なんとも言いがたい空気が流れるが・・・ティアラは斜め下を向きながら口を開いた。







ティアラ「本当に恥ずかしい夢だわ・・・。」

ルゥク「普通・・・ちょっと人には・・・言えない夢だね・・・」







やすのぶ「なんでやねん!!食ってみたいねん!!!肉!!!ええやん!!肉!!!」


哀しそうに二人に訴えるやすのぶ。





やすのぶはこの1年、まともに肉を食べていないようだった。


あまりに悔しくてティアラに質問を投げ返すやすのぶ。





やすのぶ「じゃぁ!!ティアラの夢は何なんだよ!!!?言ってみろよぉ〜〜!!!」



ティアラ「私の夢!??」


ティアラは、頬を染めて・・・恥ずかしそうにする。


やすのぶと大して変わらない夢なのだろうか??




やすのぶ「早く・・・早く教えろょぉ〜〜〜・・・」

少し涙ぐむやすのぶに満面の笑顔でこう答えた。










「私の夢は・・・すっごく若く見えるお婆さんになることょ。」









やすのぶ「・・・・・・」



目を丸くして止まったままのやすのぶ。だがすぐさま呆れた様に口を開いた。




やすのぶ「なんだよ・・・俺より志の低い夢じゃないか・・・・。」



ティアラ「!!!!!!!!!!!!!」



するとティアラは血管を浮き立たせて怒り出した。





ティアラ「なによ!!女の子が若さを保ち続けるのは至難の技ってわかってないわね!!!?」

やすのぶ「い、いや・・・だって・・・」

ティアラ「毎日使う化粧品だってバカになんないのよ!?この今付けてる口紅!!!

判ってんの!?今年の春の最新作よ!!!??」

ルゥク「あ・・ティアラ・・・」

ティアラ「朝だって化粧のために早く起きるのよ!!!あんた達、男なんて歯磨いて

服来て終わりかもしれないけどねぇ!!!」

やすのぶ「う・・うぅ・・・・・・・・」

マシンガンのようにやすのぶに怒鳴り付けるティアラ。薮蛇を突付いてしまったらしい・・・。


ティアラ「夜だって11時には珠のお肌の為に睡眠とってるのよ!!?11時よ!?

11時!!!!?わかってんの???毎日11時よ!!!!!?

冬ソナとかも見れないからビデオ撮ってんのよ!!!???

判ってんのぉ!!!!!!!!???」





妖精の世界には化粧品もテレビもビデオもあるらしい・・・。

私も初耳である・・・。




やすのぶ「ご・・ごめんなさい〜〜〜〜〜〜・・・・・」


堪らず泣き出しながら謝るやすのぶ。





するとティアラは息を整えてやすのぶにこう言った。


ティアラ「わかってくれれば・・・いいのよ・・・。」






ティアラはにっこり笑うが、もはや美しく可憐な妖精ではなく、

至極最近の30歳手前の女性にしか・・・やすのぶには見えなかった・・・。






やすのぶ「まぁ・・・とりあえず、今日はこれで帰るよ・・・。」


草原の息吹・・・草原、森、泉と調べたがブルの姿は見えない。


どちらにしろ一度、会社に戻ったほうがいいようだ。




ルゥク「そうですか・・・、それじゃ今日は・・・これで・・・。」


ティアラ「又、暇な時には、この泉に来てね!!」


二人は笑顔で手を振り、やすのぶを見送ってくれた。



この後、やすのぶはちょくちょく、泉に顔を出すようになる。





会社への帰路、やすのぶは考えていた。





やすのぶ「・・・・・・・・・・夢か・・・。」





虚ろに昔のことを思い出すやすのぶ・・・。

10年も昔のこと・・・。








????「依頼を受ける時は!!!どんなときでも!!!!ヒーローは余裕を見せて笑いながら受けるもんだ!!!!!」



やすのぶ「・・・・・そうなん?笑うん??」


鼻を垂らしながらやすのぶは一生懸命、青いマントの男の言葉を聞く・・・。



????「そうさ!困っている依頼人を不安にさせない為だ!!!」



やすのぶ「おれもなれるんかなぁ・・・?そんなヒーローに・・・?」








????「・・・・・・どうだろう・・・?」










やすのぶ「・・・・・・」






????「・・・・・・」







やすのぶ「(TдT)うえぇぇぇ〜〜〜〜」





????「わっ!わっッ!!泣くな!!鼻水垂らすな!!!」



やすのぶ「(T-T)ズズズズーーーー、ごしごし・・・。」


????「マントに鼻水付けんなァァ〜!!!やすのぶゥ〜〜!!!」





やすのぶ「だってぇ〜〜・・・・」




????「夢は叶えるまであきらめたら駄目だ!!お前次第だョ!!!!!」






笑いながらハンカチでやすのぶの鼻水を拭いてくれる青いマントの男・・・。






やすのぶ「おれ・・・ヒーローになりたいねん・・・。」




????「だったら、あきらめずに頑張れ!!ナ!?」




やすのぶ「うん!!!!(T-T)ごしごし・・・。」


????「手についてた鼻水を・・・なんで俺のマントで拭くんだ!!!!」








????「まったく・・・・・・!!」







????「〜・・」






目をしっかりと開けて草原の息吹を歩くやすのぶ。



ブレスレットが光だしその姿を戦士へと変える・・・・・。








ヤスノV「困っている依頼人のためになら、どんな依頼でも笑いながら受け続ける。

そんなヒーローになるのが・・・・・俺の夢だ!!!」







青いマントをひるがえし、草原の街道へと帰っていくヤスノV。


目の前には5匹のビッグアッピーが待ち構えていた。


ヤスノV「!!!」





「・・・・・・・・・・・・・・・・。」







しばらく経って、会社に着くヤスノV。





勝つには勝ったようだがボロボロだったことは言うまでもない。


ヒーローへの道のりはまだまだ遠いようだ。




〜〜〜後編に続く〜〜〜










--------------------------------------------------------------------------------------
                  報告書

 氏名 : やすのぶ 


 ヒーロー名 : ヤスノV


 依頼内容 : 買い物(パンとリンゴ)


 今回の報酬 : 50ドニア


 月賦 : 4,500ドニア(確定)


 遂行可能ミッションレベル : D−



査定評価


イデアツーリスト内ランク  最下位


勤務期間  14日 (契約完了)


備考



・ イデアツーリストとの正式契約完了。

・ 戦闘に関する特訓が至急必要。

・ 個人的な特訓で必殺技を習得した様子ですが「使えるモノ」であるかは不明。

・ 装備品の支給、後に、細工員あおざるによる装備品のパワーアップを遂行。

・ ミッションで走り回り壊れかけているので、今回の装備支給品として履物を検討します。



                           査定員  百絵



題名:走れ!イデアツーリストのヤスノV

第2話 笑えない依頼 (ルゥク編) 〜前編〜    〜〜〜END〜〜〜




                           紅の氷 イデア YasunoV著