題名:走れ!イデアツーリストのヤスノV
人間と妖精・・・・。
長い年月の歴史上、その種の恋愛が成就したことは無い。
人は人と結ばれ年老いて死に、妖精もまた、孤独に死んでゆく。
人と妖精の間に決して子供が生まれることは無く、
また、共に生きてゆくことはできないのである。
それでも人は妖精の美しさに魅せられ、妖精は人の優しさに魅入られる。
人間と妖精が愛し合った場合・・・・・・
たとえ、その先に待つのが悲しい別れであっても、その恋を、愛を、
歴史に残る者は貫こうとした。
決して、結ばれることは無いとわかっていても・・・・・
ルゥクとティアラ・・・。
この二人に永遠の愛を貫くことができるのであろうか・・・。
第2話 笑えない依頼 (ルゥク編) 〜〜〜後編〜〜〜
ルゥクとティアラに出会ってから15日が経とうとしていた。
草原の息吹・・・。泉のそばにある大きな岩に腰を掛けながら二人と話すのが
やすのぶの日課になっていた。
今日も二人の邪魔をして、昼休みを利用して遊びに来ている。
やすのぶ「・・・・・・・で、あおざるさんにこのブーツを作ってもらってさぁ・・・・・」
ルゥク「へぇ〜〜・・「ヤスノブーツ」っていうんですか・・・。」
ティアラ「・・・・・・。」
うれしそうに話すやすのぶ・・・。
こわれかけていたので、新品の靴を会社に支給してもらい自慢している。
やすのぶ「靴磨きする手間が省けてよかったぁ。」
ルゥク「いや、ちゃんと靴くらい磨きましょうょ・・・。」
笑いながら顔を抑えるルゥク。
最近はやすのぶと話しているのが楽しいらしい。
ティアラ「・・・・・・。」
やすのぶ「・・・・・・。」
ルゥク「・・・・・・。」
やすのぶとルゥクは顔を見合わせて首を傾げる。
ティアラの様子が昨日までとは違うからだ・・・。いや、日々、ティアラから笑顔が消えていくのが
やすのぶにもルゥクにも判っていた。
やすのぶ「ティアラ・・・・大丈夫?」
ティアラ「・・・・・・。」
ルゥク「ティアラ!!」
ティアラ「!!」
びっくりして羽をバタつかせ、飛び上がるティアラ。
が、その後ルゥクに急降下してくる。
バキ!!!!!!!
ティアラ「なによ!!びっくりするじゃない!!もぉ〜〜〜〜〜!!!」
ティアラのパンチがルゥクの右頬に突き刺さる。腕が細い分だけ余計に食い込んでいた。
ルゥク「ぐはぁ!!い、痛いよティアラ・・・・。」
やすのぶ「いや・・・ずっと呼んでたんっすけど・・・・ティアラ姐さん・・・。」
申し訳なさそうにするやすのぶ・・・。やすのぶはティアラに頭が上がらない。
化粧品、冬ソナ事件がトラウマになっていたのだ・・・。
ティアラ「!!??・・・えっ・・そうだったの??」
やすのぶ「なんか・・・お邪魔だった・・・かな?」
ちょっと哀しそうなやすのぶ。昼休みの弁当も食べ終わっていたので身の回りの片付けを始めだす。
ルゥク「えっ?まだ昼休み40分も残ってるじゃないですか!?もうちょっと・・・」
やすのぶの片付ける姿を見てやすのぶが会社に戻ろうとしているのを感じ取るルゥク・・・。
ティアラ「あっ・・・・」
それを見て申し訳なさそうにするティアラ。
悩み事でもあるのだろうか・・・。この数日ティアラは、ずっとこんな調子だった。
ルゥク「ティアラ・・・今日のはティアラが悪いょ・・・・。」
ティアラの方を向いて両腕を腰に乗せるルゥク・・・。
やすのぶ「いや、いいんだよ。ルゥク・・・。どの道今日は早めに会社に戻らないといけなかったから・・・。」
片付けを終え、岩から降りるやすのぶ。今日も泉に日の光が反射して天気の良い日だ。
ティアラ「ごめんなさい!!そんなつもりじゃなかったの!!」
必死でやすのぶに謝るティアラ・・・。申し訳なさそうにずっと下を向いている。
やすのぶは笑いながらティアラに答えた・・・。
やすのぶ「ははははは、俺の方こそごめんネ・・・。本当に今日は早く戻らないといけなかったから
こんな時間に帰るけど・・・明日はきっと時間が取れると思うから・・・。」
ティアラ「・・・・・・。」
ずっと下を向いたままのティアラ。明日はやすのぶに来て欲しくないのだろうか?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ルゥク「ティアラ!!」
びくッ!!!
ルゥクの声に肩をビクつかせてやすのぶに答える。
ティアラ「うん・・・。そうだね・・・。また、明日・・・。」
やすのぶ「ははは、また明日ね、ティアラ・・・。」
ティアラに手を振るやすのぶ・・・。
ルゥクを手招きしてティアラに背を向ける。肩を組んでティアラに聞こえないように小声で話をした。
やすのぶ「ティアラ元気ないみたいだから・・・元気付けてあげなょ・・・。」
ルゥク「なんで最近元気ないのか・・・僕にもわからないんですよ・・・」
やすのぶ「愛が足りないんじゃないのか・・・?」
判ったような事をいうやすのぶ・・・。ちなみに、やすのぶは「彼女」がいない・・・・。
金もないので当然である。
ルゥク「とにかく、できる限り・・頑張ってみます。」
やすのぶ「あぁ・・・、明日は元気なティアラの笑顔が見たいもんな・・・。」
笑いながら二人はお互いの胸を小突きあう。
やすのぶとルゥクは随分と仲良くなっていた。
やすのぶ「ティアラ!!また明日な!!!!!」
ティアラの方を向いて手を振るやすのぶ・・。
ティアラ「・・・・うん!!!また明日!!!!」
さっきとは打って変わって満面の笑顔を見せるティアラ・・・。
やすのぶが本当に邪魔だったのか??
やすのぶ「・・・・・・・・・。」
やすのぶ「帰るときにあんな笑顔を見せられると・・・逆に辛いね・・・・。」
ルゥク「元気出してください・・・やすのぶさん・・・・。」
ルゥクはかなり申し訳なさそうにしている・・・・。
やすのぶ「んじゃ、行きますか・・・。」
小走りで会社へと戻っていこうとするやすのぶ。
ティアラの姿が見えるギリギリの距離・・・ティアラは大声でやすのぶに叫んだ。
ティアラ「やすのぶさん!!!!本当にごめんなさい!!!!」
やすのぶ「いいって!!!明日は元気な顔を見せてくれよ!!!!!」
立ち止まって振り返り、叫び返すやすのぶ。
ティアラ「さよなら!!!!!!やすのぶさん!!!!!!!」
やすのぶ「あぁ!!!!!!またな!!!!!ティアラ!!!!!!!!!!!!!!!」
笑顔で手を振るやすのぶ。そして、懐中時計を見ると随分時間が経っていたので急いで会社へと戻っていった。
ルゥク「どうしたんだ?随分元気ないじゃないか・・・・それに、やすのぶさんにも・・・・」
眉をしかめてティアラに問いかけるルゥク。
ティアラ「うん・・・悪い事したなぁ・・・・」
泉に映る自分の顔を見つめてしょげているティアラ・・・。
ルゥク「そうだよ、ティアラらしくないよ・・・・」
少し優しめに叱るルゥク。ティアラの頭をそっと撫でる・・・。
ティアラ「あっ・・・」
ルゥク「どうした?ティアラ・・・。」
ティアラの頭を撫でるのは二人にとっては日常のスキンシップである。
しかし今日のティアラは、なぜかいつもより嬉しそうにしている・・・。
ティアラ「ふふふ・・・・・・・。」
ルゥク「・・?・・・・。」
ルゥクはにこやかに笑いながらティアラを撫で続けた・・・。
やすのぶ「はっ・・はっ・・はっ・・・・」
息を切らせて会社へ向かうやすのぶ。
しかし2週間前と違い、まだまだ息も続いている。そして何より、身のこなしが軽くなっていた・・・。
やすのぶ「へへへ・・・楽勝、楽勝・・・・。」
走るスピードも、横切るステップもかなりすばやい。
伊達に毎日、新米奥さんの買い物を請け負っているわけではなかった。
人と人の間をすばやく擦り抜ける。
前まで人に当たり迷惑を掛けていたのに・・・同一人物とは思えない走りだった・・・。
図書館のお姉さん「やすのぶくん!また買い物?」
図書館のお姉さんがやすのぶに声を掛ける。草原の街道に買い物に来ていたようだ。
やすのぶ「ははは、会社に戻るんだ!」
余裕を見せて手を振るやすのぶ。
図書館のお姉さん「ちゃんと前見て走るのよ!!がんばってね〜〜!!」
やすのぶは毎日買い物をしている為か、町の人と大分仲良くなっていた。
やすのぶ「OK!まかせといて!!」
町を駆け抜けるやすのぶ。
調子に乗ってやすのぶの悪い癖が出てきた・・・。
やすのぶ「(毎日通っている道さ・・・目を瞑ったって走れるさ!!・・・・。)」
そう思うと・・・・・在ろうことかやすのぶは目を瞑って走り出した!
「・・・・・・・・・・・」
それでも、人の体を気配で感じ、走り抜けていく??
大分、ヒーローらしくなってきたものだ・・・。
書いている私も、少しうれしくなってくる・・・。
ドガ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!!!!!!!!!!!!
大きな音が鳴ったその瞬間、やすのぶは大空に舞い上がっていた・・・・。
やすのぶ「ぐふぉぉ〜〜〜〜〜あぁぁぁ!!!!!」
なぜか・・・大きな牛が町の中を駆け回っている・・・・。
人の気配は感じられても「牛」の気配は感じられなかったのか?
何にしても・・・・やっぱりやすのぶは、しょせん・・・やすのぶである・・・。
幼い子供「おかぁさん、あのお兄ちゃん・・・飛んだよ・・・。」
おかぁさん「ダメ!!見ちゃいけません!!!!」
ぐちゃ・・・・
なまめかしい音が地面から音を立てる・・・・。
子供には見せられない無残な姿だ・・・。
アリッサ「誰か!!!うちの「も〜ゼ」を止めて!!!!!!」
街中を走り回っているのはアリッサの牧場の牛「も〜ゼ」だった。
町の人は危険を回避するため遠くから見守っている・・・。
やすのぶも目を瞑って走れるわけだ・・・・。
「も〜ツァルト」の娘の「も〜ゼ」の牛乳は母をも超える味の牛乳ともっぱらの噂だ・・・。
そして牛にしては穏やかということでも有名だった・・・・。
しかし大人しい筈の「も〜ゼ」が凶暴に街中を走り回る・・・。
やすのぶ「あいたた・・・調子に乗りすぎた・・・・。」
アリッサ「あっ・・・・ハズレさん!!だいじょうぶ??」
やすのぶ「いきなり失礼な!!どうなってんだょ?これ!!??」
アリッサ「牧場にブルが現れて「も〜ゼ」を盗もうとしたの!!」
やすのぶ「なに???」
アリッサ「ブルは「も〜ゼ」がブッ飛ばしてどっか行っちゃたけど・・・そのせいで興奮して・・・」
やすのぶ「・・ふぅ・・・・・。」
ちょっとため息をつくやすのぶ・・・。
やすのぶ「やれやれ・・・」
やすのぶの付けているブレスレットが光だし・・・その姿を「戦士」へと変える・・・。
アリッサ「ちょっと!!!うちの「も〜ゼ」をどうするつもりよ!!!」
焦るアリッサはやすのぶに怒鳴り付ける。
相変わらずたくさんの唾が降りかかってくるのでヤスノVはマントでそれを防いだ。
ヤスノV「き、傷つけないように・・・止めるよ・・・。」
ヤスノVは「ヤスノブレード」を持っていない・・・。「大きなかばん」にしまっているようだった。
すばやく「も〜ゼ」の前に立ちはだかるヤスノV・・・
ヤスノV「「も〜ゼ」!!止まってもらうぜ!!!!!」
両手を広げて「も〜ゼ」を待ち構えるヤスノV・・・。
ドガ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!!!!!!!!!!!!
大きな音が鳴ったその瞬間、ヤスノVは大空に舞い上がっていた・・・・。
ヤスノV「ぐふぉぉ〜〜〜〜〜あぁぁぁ!!!!!」
アリッサ「ヤスノVィィ〜〜〜〜〜!!!!!!!」
幼い子供「おかぁさん、あのお兄ちゃん・・・また飛んだよ・・・。」
おかぁさん「ダメょぉ〜〜!!!!見ちゃいけません!!!!!!!」
スローモーションで大空に舞い上がるヤスノV・・・・。
ヤスノVはアリッサの方を向いてにこやかに笑い・・・目でアイコンタクトをとる・・・・。
ヤスノV「 (やっぱ・・・・無理でした〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・) 」
アリッサは無言で笑いながら涙を流す・・・・。
アリッサ「 (だからあんたは・・・・ハズレなのよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・) 」
ぐちゃ・・・・
なまめかしい音が地面から音を立てる・・・・。本日、二度目である・・・。
ヤムチャ張りの惨めな姿になってしまったヤスノV・・・。かなりのダメージのようだ・・・。
(わからない人・・・・すいません。)
そして子供にもあまり見せたくない光景だった・・・・。
アリッサ「どうしよう!どうしよう!!頼みの綱?がこれじゃ・・・もう・・」
ポロポロと涙を流すアリッサ・・・その瞬間、「も〜ゼ」が幼い子供の方へ走っていく・・・。
おかぁさん「いやぁ〜〜〜〜!!!!」
ヤスノV「 !!! ヤバイ!!!!!!」
アリッサ「やめて!!も〜ゼッ!!!!!!」
ヤスノVは立ち上がろうとするが二度も跳ね飛ばされ、体が思うように動かない・・・。
幼い子供「あ・・・あ・・・・ああぁ・・・・・」
足がすくんで動けない子供・・・。
その間に一瞬で割って入る一人の男がいた・・・。
トスッ・・・・・・・・・・
1tは超えよう「も〜ゼ」の体当たりの衝撃を殺して「も〜ゼ」を止めた・・・。
その男は片手で「も〜ゼ」を止めている・・・・。
ヤスノV「ああっ・・・・」
安心して体中の力を抜き、尊敬の眼差しで男を見る。
イデアツーリスト、社長 おけなであった。
おけな「やすのぶくん・・・・・何してるの??・・・新しい遊びかな?それ??」
笑いながら「も〜ゼ」の首を撫でる、おけな。
興奮していた「も〜ゼ」は少しずつ大人しくなっていった・・・。
ヤスノV「面目ない・・・。おけなさん。」
おけな「牛を止めるのに変身してちゃ・・・ヒーローへの道のりは遠いぞ。」
さわやかな笑顔でヤスノVに話しかけるおけな。
実際着ている服はネクタイにスーツ姿だった・・・。
何処かに行く途中だったらしい・・・。
おけな「力任せに突っ込んじゃダメだよ・・・。もっと考えなきゃ・・・。」
社長の貫禄に素直に耳を傾けるヤスノV・・・。
おけな「落雷のエネルギーが地面で分散するように、力も又、分散させるんだ・・・」
にこにこと笑いながら講釈する姿は戦士の鏡だ・・・。
幼い子供「ありがとう、ネクタイのお兄ちゃん!!」
おかぁさん「ありがとうございます!!なんてお礼を言っていいか・・・」
おけな「いいえ、どういたしまして。」
笑いながら子供に微笑むおけな。
おけな「やすのぶくん、俺は用事があるからもう行くけど・・・早く会社に・・・」
やすのぶ「はい!!判りました!!!」
元気よく返事をするやすのぶ。
すると、アリッサがゆっくりと歩きながら近寄ってきた・・・。
アリッサ「け・・・けっけ・・け・・・・・」
言葉を出しにくい様子のアリッサ。
おけなは笑ってアリッサに「も〜ゼ」を引き渡そうとする。
おけな「この子・・君の所の子だね・・・・。たしかアリッサさんだよね・・先日はうちの社員がお世話に・・・」
にこにこと笑いながら「も〜ゼ」を渡そうとするおけな・・・・。
するとアリッサは大声を上げて急におけなの方へ走ってきた。
アリッサ「結婚!!!!してください!!!!!!!!!!!!!!!」
びっくりして全速力で逃げ出すおけな・・・。
しかしそれに結構付いていっているアリッサ・・・・。
おけな・・・・こんなところでピンチである・・・・・。
アリッサ「うちの牧場、けっこう儲かってるんです!!それに私、尽くすタイプなんです!!!!!!」
も〜ゼ「も〜〜〜〜〜〜〜っ!!も〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
飼い主のアリッサに付いていき、走り出すも〜ゼ・・・・。
アリッサはおけなに一目惚れしたようだった・・・・。
アリッサは目をギラギラさせて、おけなを追い掛けていく。
ここだけの話・・・おけなにはすでに奥様がいるのだが・・・
奥様のお話はいずれ又・・・・・。
やすのぶ「おけなさん、頑張ってください・・・・」
おけなの後姿を心配そうに見つめ変身を解くやすのぶ。
一路、会社への道を又、走り始めた・・・。
病院の前を抜けて、銀行の細道を抜ける・・・。
やすのぶはイデアツーリストに、やっとの思いで着いた・・・。
やすのぶ「遅くなりました・・・。」
イデアツーリストのドアを開けるやすのぶ。
すると、かすみとサンタ帽子を被った活発そうな女の子がカウンターに座り、なにやら話している・・・。
やすのぶ「あれ???クレスさん??」
クレス「・・・・・・・。」
無言でにっこりと笑い、手を挙げてやすのぶに挨拶するクレス。
すくっと立ち上がり、部屋の奥の台所へ入っていった。
サンタ帽子を被った女の子。クレスは、イデアツーリストの部長である。
いつの間にか会社に来て、いつの間にか帰ってしまう・・・。そんな女の子である。
性格はこれでもか!!と言うほど明るいのだが、部類のアニバーサリー好き。
探検家ではあるが好んで「呪い」を使うため、「イデアツーリストの呪術師」の二つ名をもつ。
1日最低1度の「コックリさん」は絶対に欠かさない・・・・。
やすのぶ「何を話していたんですか?」
かすみに問いかけるやすのぶ。
眉を少ししかめて手で頬杖をつきながら、かすみは口を開いた。
かすみ「例の「わるわる団」が街の近くに出たらしいのよ・・・」
やすのぶ「えぇ・・・知ってます。さっき友達の牛が盗まれそうになったんです・・。」
カウンターに座り、かすみの話を聞くやすのぶ。
かすみ「貿易商の人から通報があってね・・・私とクレスちゃんで退治しに行くことになったの・・・」
やすのぶ「えぇ!?ブル相手にわざわざ、かすみさんが出るんですか?」
クレス「社長命令なのよ・・・。今回は・・。」
台所から戻ってきたクレスは手にりんご3つとガラスのコップを持ってきている。
その一つをやすのぶに放り投げた。
りんごをうれしそうにキャッチしてやすのぶはクレスに問いかける・・・。
やすのぶ「二人が出るなんて、ブルが可哀想になってくるよ・・・。」
りんごにかぶりつくや否やあっという間に食べてしまうやすのぶ。
クレスはかすみの前に空のグラスとりんごを手渡しして、やすのぶにこういった・・・。
クレス「生意気にも、「妖精狩り」をしたのよ・・・。」
やすのぶ「妖精狩り!??」
妖精は主にティモーレに生息し、その可憐な容姿と歌声で人々に癒しをもたらす。
しかし、妖精は非力なために「狩り」の格好の餌食となってしまうことが多かった。
そこで、国々が国家間条約を取り交わし「妖精に危害を加えた者は即刻死刑。」と法律が定められた。
その法律は魔物に対しても適用され万一、妖精が危害を加えられていた場合は
「国家警察」又は各種、「自警団」に通報する事となっている。
この場合、報酬に関しては、「国から支給される」・・・。
つまり「わるわる団」は賞金首になったのである。
かすみは風の魔法で丁寧にりんごの皮をむき、種を取り除く。
かすみ「ここまで悪さを働いたら、もう放ってはおけないのよ・・・。」
クレス「めんどくさい・・・。」
クレスはりんごをかじりながら眉をしかめている。
やすのぶ「・・・・・・・。」
下を向き、暗い表情を見せるやすのぶ。
細かく風で刻んだリンゴをグラスに入れて小さな竜巻でミキシングするかすみ。
リンゴジュースが出来上がったところでやすのぶに話しかけた。
かすみ「どうしたの?元気ないけど??」
リンゴジュースを飲みながら、不思議そうにやすのぶに問いかける。
やすのぶ「・・・ティアラ・・・。」
クレス「!!何それ?彼女なの?何!?何!!?」
この手のネタに妙に反応するクレス・・・。
リンゴを食べて汁の付いた指先でやすのぶの服を突っつく・・・。
やすのぶ「友達の・・・妖精の名前です・・・。」
かすみ「えっ!?それって・・・」
ジュースをカウンターにおいて心配そうにしてくれるかすみ。
クレス「ありゃ・・・、ちょっとマズイんでないかなぁ・・・ブルが徘徊してる、この時期・・・」
やすのぶ「・・・・・・・。」
かすみ「・・・・・・・。」
クレス「しゃり・・しゃり・・・・」
少し上目使いでリンゴを食べ終わるクレス・・・。
やすのぶ「俺、様子見てきていいですか?ティアラの・・・・」
かすみ「そうねぇ・・・」
ホワイトボードの予定表を書き換えようとするかすみ。
するとクレスが食べ終わったリンゴをゴミ箱に捨ててこう言った・・・。
クレス「私、調べたげようか?」
やすのぶ「・・・・えっ?」
手をおしぼりで拭き、得意そうに懐からハンカチらしきものを取り出す。
クレス「ふふふふふふ・・・・・。」
この笑い方が結構怖い・・・・。
ハンカチを開くとひらがな50文字と下のほうに「YES」と「NO」と書かれているハンカチ・・・。
やすのぶ「・・・・・・、まさか・・・」
かすみ「・・・・・・・・。」
片手で顔を伏せ、首を横に振るかすみ・・・。
財布からきれいに磨かれた「10ドニア玉」を取り出し、ハンカチの上に置いた・・・。
クレス「コックリさん、コックリさん・・・来て下さい・・・。」
やすのぶ「来なくって・・・・いいョ・・・」
堪らず涙を流すやすのぶ・・・。
クレス「ティアラちゃんは無事ですか・・・?」
すると、指も置いていないのに「10ドニア玉」は「NO」の方に動いていく・・・。
クレス「・・・・・・・・・」
やすのぶ「・・・・・・・・・・・」
かすみ「・・・・・・・・・・・」
クレス「・・・い、今の無〜〜〜〜し!!」
やすのぶの方を向いてケタケタっと笑いながら「10ドニア玉」を隠すクレス・・・。
やすのぶ「そ、それ信用できるの・・・?」
笑っているが血管が浮き出てきているやすのぶ・・・。
クレス「やすのぶくんは・・・貧乏ですか・・・?」
やすのぶ「オイ!・・・」
すると、「10ドニア玉」は「YES」の方に動いていく・・・。
クレス「あっ・・・機嫌が悪いわけじゃなかったんだ、コックリさん・・・」
かすみ「もういいから行きなさい!やすのぶくん!!」
涙を滝のように流しながら指示を出してくれるかすみ・・・。
やすのぶ「すいません!!すぐ戻りますから!!!」
かすみはやすのぶの「留守番」の枠にあおざるを入れることによりシフトの調整をしてくれた・・・。
クレス「・・・・・不安にさせただけだったかな・・・?」
かすみ「・・・・かなりね・・・・」
コックリさんのハンカチを畳みながら申し訳なさそうにするクレス・・・。
クレスとかすみは早急にブルの殲滅の用意を始めた・・・。
やすのぶ「くそ!!無事でいてくれ・・・」
やすのぶは一路、草原の息吹、奥の泉を目指した・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・。
やすのぶ「!?あれ??ルゥク??」
ルゥク「やすのぶさん!!!」
そこには何故かティアラの姿はなく、ルゥクが一人、オタオタしながら泥にまみれていた・・・。
やすのぶ「おい!どうしたんだ!?」
ルゥク「一度家に戻ってティアラの好きなクッキーを持ってきたら・・・ティアラの姿が見えないんです!!!」
やすのぶ「なんだって!?」
ルゥクはティアラを探していたらしく白い服が茶色くなっていた・・・。
やすのぶ「まさか・・・「わるわる団」か!?」
ルゥク「えっ!!?わるわる・・・?」
やすのぶはルゥクに「わるわる団」の最近の所業を説明した・・・。
ルゥク「そんな・・・「妖精狩り」なんて・・・・」
やすのぶ「くそ・・!!よりによってこんな時に・・・・!!」
ルゥク「・・・・・・・・・。」
下を向いて小さく震えるルゥク・・・・・・。
ルゥク「やすのぶさん!!!お願いです!!」
大粒の涙を浮かべてやすのぶに大声を掛ける・・・。
ルゥク「ティアラを「わるわる団」から救い出してください!!報酬は・・十分な物を用意しますから!!!」
ルゥク「ぐっぅ・・ぐぅぅッ・・・・・・お願いです・・・・・・」
やすのぶ「・・・・・・。」
ルゥク「ティアラは・・俺の大事な・・・大事な・・・・恋人なんです・・・・。」
やすのぶ「・・・・・・・。」
ルゥク「片思いかも知れないけど・・・ティアラは・・・夢をくれた・・安らぎも・・暖かさも・・」
大粒の涙をボロボロと流すルゥク・・・。
やすのぶ「ルゥク・・・任せろ・・・・。」
ルゥク「・・・・・やすのぶさん・・!!」
やすのぶの付けているブレスレットが光だし・・・その姿を「戦士」へと変える・・・。
にっこりと笑ってヤスノVはルゥクにこう言った。
ヤスノV「その依頼、引き受けさせてもらうョ・・・。」
ルゥク「ありがとう!やすのぶさん!!!」
ヤスノV「ルゥクはとりあえず家に戻っていてくれ・・。「わるわる団」に襲われたらマズイしね・・・。」
ルゥク「わ、判りました・・・。」
手を握り締め自分の力の無さを憎むルゥク・・・。
ヤスノV「じゃ、サクっと助けてくるから・・・」
ルゥク「お願いします!!」
ヤスノVは草原の息吹をひた走る・・・・。
3〜4分走りヤスノVはあることに気付く・・・。
ヤスノV「ああっ!!!」
力なく、両手を地面に突くヤスノV・・・。
ヤスノV「おれ、「わるわる団」の居場所・・・知らへんかった〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
ヤスノV「おれ、なんでこないやねん!!!あかんたれや!!おれ、あかんたれやったんや!!!!」
今更、判りきったことを大声で嘆くヤスノV・・・。
その時、かすみとクレスを思い出すヤスノV・・・。
確か、わるわる団の殲滅を決行するはずだ・・・。
急いで「Guild無線」を使うヤスノV・・・。
Guild無線とは、会社の社員、全員に通達を送る際に使用する無線連絡機である。
ヤスノV「かすみさん!居ますか!!?」
しばらくして、かすみから返信が来る・・・。
かすみ「どうしたの・・・?ティアラさん、無事だった??」
ティアラを心配してくれていたかすみ・・・。
ヤスノV「・・・・・「わるわる団」に捕まったと思います・・・。」
かすみ「!!・・・そんな・・・」
ヤスノV「おれ、友達から依頼を受けたんです!!同行させてください!!!」
クレス「そうなんだ・・・。おいでよ、ねぇ・・かすみさん・・・」
かすみ「えぇ・・・いいわ・・いらっしゃい!!」
ヤスノV「ありがとうございます!!かすみさん!!」
ヤスノVは「草原の街道」の北の民家でかすみ、クレスと待ち合わせて合流した・・・。
クレス「ふぅ・・・さてと・・・行きましょ〜〜か・・」
いまいち緊張感のないクレス・・・・。
よく見ると武器を持っていない・・・。
ヤスノV「あの・・・クレスさん・・・武器は?」
クレス「ダルイから忘れた・・・。」
かすみ「・・・・・・・・。」
片手で顔を伏せ、首を横に振るかすみ・・・。
はっきり言って、それは忘れたとは言わない・・・。
ヤスノV「なんか・・クレスさんが来る意味あるんですか・・・?」
クレス「やすのぶくん風に言うなれば・・・・・」
やすのぶの真似をしながらクレスはこう言った・・・。
クレス「妖精・・・見てみたいねん・・・・」
ヤスノV「・・・・あんたもう帰れョ・・・。」
クレス「うえ〜〜〜ん・・・かすみさん!!やすのぶがあんな事言う!!!!」
嘘泣きしながらかすみに抱きつくクレス・・・。
かすみ「やすのぶくん、これでも貴方の上司なのよ・・・。我慢しなさい・・・。」
クレス「(Σ(´Д`;!!! これでもって・・・・)」
そう、クレスは部長、やすのぶは平である・・・。
素手であっても剣を持つヤスノVよりも何倍も強い・・・・。
ヤスノV「・・・・り・・理不尽や・・・・(男女平等って一体何なんだろう・・・・・?)」
哀しそうに下を向くヤスノV・・・。
かすみ「と、とにかく!!急ぐわよ!!!ティアラさんが心配でしょ!!??」
言い様が無くごまかされたような気がするヤスノVを他所に「わるわる団」のアジトへと向かって行った・・・・。
「わるわる団」のアジト・・・。
草原の街道から西にある断崖の奥に、岩で隠された「隠し扉」がある・・・。
それをそっと気付かれないように魔法で動かすかすみ・・・。
見張りも居ないようで楽に奥に進むことができた・・・。
ブルは所詮「豚人系」の魔物・・・・。
こういうことにはズサンである・・・。
奥に進むと道が二つに分かれていた・・・・。
かすみ「いい・・・ここからは二手に分かれるわよ・・・。」
ヤスノV「はい・・・。」
クレス「・・・・・・。」
無言で手をあげるクレス・・・・。
かすみ「私は一人で左へ・・・あなた達は右へ行って頂戴・・・。」
二手に別れ、左の道を真っ直ぐ進んでいくかすみ・・・。
クレスと二人っきりになって右の道を奥に進んでいくと「木のドア」に差し掛かる・・・・。
奥から「笑い声」が聞こえてきた・・・。
クレス「・・・・・この声・・ブルだけじゃない・・・?」
目をきらりと光らせてボソッと口を開くクレス・・・。
ヤスノV「・・・・何故だ・・?・・・・」
クレス「「わるわる団」が妖精の売り手なら・・・買い手がいるって事ね・・・・。」
ヤスノV「・・・・・・・・・。」
心臓の音を激しくさせながらドアノブに手を伸ばすヤスノV・・・。
一方、左の道を進んだかすみも木のドアに差し掛かっていた・・・。
何とも言えない「臭い」が立ち込めてくる・・・。
かすみ「あぁ・・・私この「臭い」・・嫌いなんだよナァ・・・・」
鼻を突く臭いの正体は「豚」特有の悪臭だった・・・。
勢いよくドアを開けるかすみ・・・。
バンッ!!!!!!!!!
そこには15匹のブルが食事を取っている最中だった・・・・。
ぶる一郎「何者だ!!!!」
ぶる二郎「何者だ!!!!」
:
:
:
ぶる十五郎「何者だ!!!!」
15匹のブルが同時に同じことを言う・・・。
かすみ「あぁ・・・あなたたち「わるわる団」よね・・・?」
ぶる一郎「失敬な!!!!」
ぶる二郎「失敬な!!!!」
:
:
:
ぶる十五郎「失敬な!!!!」
15匹のブルがまた、同時に同じことを言う・・・。
ぶる八郎「我々は、その名も轟く「ぶるぶる団」だ!!!!」
ぶる三郎「頭の悪い事を言う・・・・。」
ブルには言われたくない言葉だった・・・。
「わるわる団」・・・・そう、かすみは「思い込み」で「ぶるぶる団」を「わるわる団」と思っていたらしい・・・。
顔を赤くするかすみ・・・。
かすみ「(うわぁ〜〜〜、私ってばショッパすぎ!!!・・・・)」
しょうもない「ボンミス」をしてしまった・・・。
しかしそんなに気にすることもない・・・・。
「わるわる」も「ぶるぶる」も大して変わらないからだ・・・・。
かすみは気を取り直してブル達にこう言った・・・。
かすみ「え〜〜〜と・・あなた達を退治しに来ました・・・。おとなしく投降して下さい・・・。」
ぶる一郎「なんだと!!!!」
ぶる二郎「なんだと!!!!」
:
:
:
ぶる十五郎「なんだと!!!!」
15匹のブルがまたまた、同時に同じことを言う・・・。
かすみ「投降してくれたら命までは奪いません・・・。」
杖を構えて威嚇するかすみ・・・。
ブルの反応にいい加減に飽きてきたその時、それぞれが違うことを口に出し始めた。
ぶる六郎「このアマ、調子に乗りやがって!!」
ぶる十三郎「おめぇみてぇな「人間」風情の言う事なんか聞くかよ!!!」
ぶる四郎「愚かの極みなり・・・。」
ぶる九郎「バカじゃねぇか?」
ぶる十郎「お勉強ができないにも程がありますね・・・。」
ぶる十二郎「太ぇ女だ・・・俺は好きだぜ・・・」
ぶる一郎「引きちぎって殺すか・・・」
かすみ「・・・・・・・・・・」
ブチッ!!!!!!!!!!!!!!!
その瞬間、かすみの額の血管が切れる音がした・・・。
さっきまでは恥ずかしさで顔を赤くしていたが・・・・今は怒りで顔を赤くしている・・・。
かすみ「今・・・何て言ったの・・・?」
ぶる五郎「へへへ、怒ってやがる・・・。」
ぶる四郎「細切れのミンチにしてやるぜ・・・。」
!!!!!!!!!!!!!ビカァァァァアア!!!!!!!!!!!!
その瞬間、部屋全体が青白く光る・・・。
かすみ「私!!!!!太ってないもん〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!!!!!!!」
ジュッ・・・・・
ぶる二郎「えっ・・・・・?」
ぶる十郎「?????」
部屋の隅にたまたま居た2匹のブル以外はかすみの魔法で一瞬にして蒸発してしまった・・・。
ぶる十郎「うをぉぉぉぉわぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」
ぶるニ郎「ぷぅぅぅ〜〜〜〜〜ぎぃ〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」
びびってしまうブル二匹・・・。
「太い」・・・それはかすみには禁句である・・・。
決して太っているわけではないが人一倍、体重には気を使っているようだ・・・。
たいていの事では怒ったりはしないが・・・唯一「太い」という言葉を使ってしまった
ぶる十二郎に過敏に反応するかすみ。
こうなってしまったら「かすみ」を止めることができる者はいない・・・。
そう、社長おけなでさえ・・・止める事はできないのだ・・・・。
ぶる二郎にゆらりと近づくかすみ・・・。
かすみ「あんた・・・私を何キロだと思ってんの・・・?」
ぶる二郎「よっよよよよよよよおよっよよ、四十キロぐラいで、ござイマするか!!!????」
口が回らないぶる二郎・・・。
かすみはぶる二郎に杖を向ける・・・。
かすみ「そんなに!!!!痩せてないわよ!!!失礼ねぇぇェェ!!!!!!」
杖の先から灼熱の焔が吹き出る・・・・。
骨どころか灰まで燃やしつくし・・消滅するブル二郎・・・・。
ぶる十郎「(やばい!!やばい!!!)」
ゆらりとぶる十郎の方に近づくかすみ・・・。
かすみ「あんたは・・どう思うの・・・?ネェ・・答えなさいよ・・・」
脳みそを全開にして考える、ぶる十郎・・・・・。
ぶる十郎「(細目に言っても殺すなら・・・・きっとこの人は太目に言っても殺すつもりだ!!!)」
当たっている・・・・・。
ぶる十郎「(冷静になれ!!「ぶる族きっての神童」と言われた僕ちゃんの頭脳が有れば
ぴったりの体重を割り出せる!!!)」
泣きそうになりながら、目一杯の計算式を頭の中で組み立てる・・・。
ぶる十郎「(そして・・・容積率を考えて・・・服の重量を抜けば・・・・)」
かすみ「言いなさいよ!!!!!!!!!!!!」
ぶる十郎「貴女の体重は「自主規制」kgですね!!!!!!」
かすみ「!!」
ガラン・・・ガラン・・・・・・
杖を落として目を大きく開くかすみ・・・・。
当たっていたようだ・・・・・。
ぶる十郎はうれしそうに連呼する・・・。
ぶる十郎「「自主規制」kgだ!!「自主規制」kgで合ってたんだ!!!!「自主規制」kgだぁぁぁ〜〜〜!!!」
しかし、ぶる十郎は大切な物を計算式に入れるのを忘れていた・・・・・。
歯を食いしばり手を握り締めるかすみ・・・・。
かすみ「うるさい・・・・。」
ぶる十郎「えっ・・・・?」
そう、ぶる十郎が計算式に入れていなかったものは・・・
ぴったりの体重を言い当てられても喜ばないという「女心」だ・・・・。
かすみ「はああぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」
手を大きく振りかぶり、ブルの顔面にコブシが飛んでいく・・・・・。
ぶる十郎「うわぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」
3年前・・・・・・・
ズバァーーーーーーン!!!!!!!!!
ドガ〜〜〜〜〜ンッ!!!!!
大きなサンドバックが宙に舞う・・・。その衝撃で鎖が引きちぎれて一気に壁まで飛んでいく・・・。
ミック「かす〜〜みぃ!!!最高だょ!!!!!!」
金髪の白い肌の男がかすみに近寄りタオルを渡す・・・。
ミック「僕のフィニッシュブロー「ミリオニックサンダー」をたった2週間で会得するなんて!!アンビリーバボーだ!!!」
サビれた拳闘ジムで右手にギプスを巻いている男、ミックは拳闘のプロ・・・。
最強戦を前に事故にあってしまい、夢を断念した男・・・。
かすみ「ありがとう・・・ミック・・・」
タオルで汗を拭き、身支度を始めるかすみ・・・。
ミック「その実力なら「拳闘のメッカ、拳闘大武会」で優勝できるよ!!!!」
かすみ「・・・・・・・・。」
身支度を終えて申し訳なさそうにするかすみ・・・。
かすみ「ごめんなさい・・それには・・出ないわ・・・ミック・・」
びっくりして左手をかすみの肩に乗せるミック・・・・。
ミック「ホワッツト!!!!!ホワ〜〜〜イィ!!!!なんでサ!!かす〜〜〜〜み!!!」
斜め下を向いて申し訳なさそうに口を開くかすみ・・・・。
かすみ「大きな声では・・・・言えないけど・・・・・」
ミック「なんだョ!!?大きな声で言ってくれよ!!!」
かすみ「ダイエットの為に拳闘やってた・・・だけだから・・・・」
ミック「もっと・・・小さな声で言って欲しかったよォ〜〜・・・・」
力なくへたり込むミック・・・。
かすみ「さよなら・・ミック・・今までありがとう・・・」
かばんを左肩に掛けて拳闘ジムの扉を開くかすみ・・・。
ミック「ジャスタァモーーメンツ!!!!!!かす〜〜〜みィィ!!!!!」
ミック「!!!!!!!!」
かすみを呼び止めるため無意識に伸ばした右手が動く・・・・。
先日までは動かすことも出来なかったのに動いた右手にミックは動揺した・・・。
ミック「ホワイ??」
かすみ「黙ってたけど私・・・魔法使いなのよ・・・その腕は・・・治しておいたわ・・・」
ミック「!!!」
かすみ「拳闘大武会は・・・・あなたが制覇して・・・・」
夕日に向かって歩いていくかすみ・・・。
右手を空に向けて歩いていく・・・。
ミック「サンキュ〜〜〜!!!!かす〜〜〜〜み!!!!かす〜〜〜〜〜〜みぃぃ〜〜〜〜!!!!!」
この1年後、ミックは拳闘大武会で優勝する・・・・。
しかし、かすみとミックが出会うことは二度となかった・・・・。
後に創刊される「ミック・著「拳闘とかすみと私」」は100万部を超える大ヒットとなる・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
かすみ「はああぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」
手を大きく振りかぶり、ブルの顔面にコブシが飛んでいく・・・・・。
ぶる十郎「うわぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」
かすみ「ミリオニック!!!サンダァァーーーーーー!!!!!!!」
ズバァーーーーーーン!!!!!!!!!・・・・・・・・・・
ドガァアァァァァアアアアン!!!!!!!!!!!!
一瞬で壁まで吹っ飛ぶブル十郎・・・・・。
首が270度回転し・・・完全に息はしていなかった・・・・・。
サッと後ろを向いてドアの方に向かっていくかすみ・・・・。
かすみ「もうちょっと・・・・軽く言って欲しかったのに・・・・・・・。」
ちょっと涙目になりながら杖を拾い上げ、部屋を後にした・・・・・・。
ふっと顔をあげて、昔のことを思い出す・・・・。
かすみ「元気にしてるかな・・・・・ミミック・・・だったっけ・・・・・」
かすみは名前を覚えるのが苦手らしい・・・・・・。
○かすみvs●ブル15匹 (決め技 : ミリオニックサンダー)
20分前・・・・右通路、奥の部屋・・
ブル衛門「へっへっへ・・・・今日は・・・いい日だ・・・・。」
ローリー「はっはっは、本当だ・・・」
剣を間近に置いて鎧を着たブルが、赤い蝶ネクタイをした貴族風の男とワインを飲んでいる・・・。
ローリー「よもや、1日で3匹の妖精が手に入るとは〜〜〜〜」
ブル衛門「ローリー殿・・・1匹500万ドニア・・お忘れなく・・・・」
ローリーのワインを注ぎ足すブル・・・。ただのブルではないようだ・・・・。
ローリー「私は約束は絶対破らない!!!なんせ!伯爵の嫡男だぞ!!」
嫡男というには随分と年のいった貴族風の男、ローリー・・・。
年は30過ぎであろうか・・・・。
赤い蝶ネクタイを伸ばして放す・・・・。
パスッ・・・・。
赤い蝶ネクタイが震えながら音を鳴らす・・・・・・。
滑稽な光景だ・・・・・。
テーブルには鳥かごが置いてあり、その中には容姿の幼い妖精が2人閉じ込められている・・・・。
ミルフィー「うぅぅうっ・・・・しくしく・・・・」
シルフィー「怖いよォ〜〜〜〜〜・・・・。」
ローリー「くっくっく、こいつはかわいらしい妖精だ・・・。さっきのレアモノの妖精はムチムチしていてダメだ・・・・。」
ワインを指につけて・・・・その雫をシルフィー達に飛ばすローリー・・・。
肩を震わせてワインの雫に怯える妖精を見てローリーは・・・・ほくそ笑む・・・・。
ブル衛門「ローリー様は幼い妖精がお好きですナァ・・・」
ローリー「当然だ!!!しかし!命あるモノなどには興味もない!!!」
怖い事を当然の様にサラッというローリー・・・・。
ローリー「この2匹は剥製にして「着せ替え人形」にするのだよ・・・・・。」
ブル衛門「さすがローリー様!!崇高な御趣味で・・・」
ブル衛門はニタニタしながら妖精の方を向いている・・・。
実際は悪趣味と思っていてもローリーは上客・・・・。
悪口を言うことは決してない・・・。
ローリー「さてさて、動けなくなるお薬を打ってあげようか・・・」
シルフィー&ミルフィー「いやぁぁ〜〜〜〜!!!!!」
その時、木のドアが景気よく開けられる・・・・。
バンッ!!!!!!!!!!!!!
ヤスノX「そこまでだ!!!!!」
青いマントの男と・・・サンタの帽子を被った女の子が部屋に入り込む・・・。
ヤスノX「イデアツーリストがある限り!!この世の悪は許さな〜〜〜〜い!!!!!」
クレス「・・・・・・はぁ・・・」
呆れてため息を突くクレス・・・・。
ドアの間近に置いてあったテーブルの椅子を引き抜きクレスは座る・・・。
ヤスノX「!!!!!!!!」
ヤスノVは奥に見えるブルにびっくりした・・・。
ヤスノV「ブルファイターじゃないか!!!???」
ブルファイター・・・豚人系、ブルの強化版で、剣を操り、攻撃を鎧で防ぐ・・・。
ヤスノVは今まで見たことすらなかった・・・・。
ブル衛門「無礼な奴らめ・・・・・・」
ローリー「そうだ!!私が伯爵コンダー家、嫡男!!ローリー・コンダーと知っての狼藉か!!!!!!」
クレス「ぶっ・・・・ロリコンだ〜・・・だって・・・・」
ローリー「そうだ!!良い名であろうが〜〜〜〜〜!!!」
ローリーにとって「ロリコン」は褒め言葉らしい・・・。鼻を高くするローリー・・・・。
ヤスノV「おれは、ヤスノV!!貴様らが捕まえた妖精を返してもらうぞ!!!!」
クレス「そうそう・・・」
クレスは「大きなかばん」から何かを取り出そうとする・・・。
ブル衛門「なんだと、〜〜〜っ!!!」
鼻をヒクつかせて牙を向くブル衛門・・・。
ヤスノV「(くっ・・・流石に強そうだ・・・、もし俺一人じゃヤバかったな・・・)」
バリッ・・・・・・・・・
クレスはクッキーの袋を破り、クッキーを取り出そうとする・・・。
そしてさらに、漫画を読み出した・・・。
ヤスノV「・・・・・・・・」
ローリー「・・・・・・・・」
ブル衛門「・・・・・・・・」
・・モシャモシャ・・
1枚目のクッキーを食べだすクレス・・・。
ヤスノV「あの・・・ク、クレス部長???」
クレス「あっ・・・・・後は頑張ってね・・・やすのぶくん・・・・・・」
妖精を遠巻きから見られて、すでに満足なのか??
クレスはクッキーを食べながら漫画を読み出した・・・・。
ヤスノV「何してんですか!!??戦ってくださいよ!!!」
愕然として訴えるヤスノV・・・。
2枚目のクッキーを袋から取り出すクレス・・・。
クレス「・・・・、やすのぶくんが助けなさいょ・・・」
ローリー「仲間割れか・・・?醜い!!」
ブル衛門「まったく・・・」
敵にすら呆れられている・・・。
するとクレスはニヤニヤしながらこう言った・・・・。
クレス「もしかして・・・怖いの・・?ブルファイター・・・?」
ヤスノV「んなっ!・・・そんな訳・・・・ありません・・・・ょ・・・・」
語尾が小さいヤスノV・・・。
クレス「でしょ?私可弱いから守ってネ・・・、ヤスノV・・・。」
部長のクレス・・・職権を乱用してヤスノVに仕事を押し付ける・・・。
しかし、ただ押し付けていたわけではなかった・・・。
クレスのクッキーの袋が置いてある隣に・・いつの間にか妖精の閉じ込められた鳥かごが置いてある・・・。
ヤスノV「!!!!!??????・・・・・えっ!!!??????・・・・・・・」
ローリー「バカな!!!???今までここにあったのに!!!」
ブル衛門「おっ!!おのれ!!!妖しか!!!???」
シルフィー「・・・・びっくりした・・・体にすごい重力が・・・」
ミルフィー「なんか・・・ムチウチになったみたい・・・。」
何かしらを使用して籠を引っ張り・・・・・助け出していたらしい・・・・・。
クレス「ごめんね・・・乱暴な助け方で・・・人質のままじゃ・・戦いにくいから・・・・」
申し訳なさそうに妖精に謝るクレス・・・・。
ヤスノVへの対応とはぜんぜん違う・・・・。
ブル衛門「おのれ!!!ぶっ殺してやる!!!」
剣を抜いて襲い掛かろうとするブル衛門・・・。
その時・・ローリーがそれを止めた・・・。
ローリー「待て!!」
ブル衛門「何故ですか!!??奴らは・・・」
するとローリーはニヤニヤしながらクレスを見つめてこう言った。
ローリー「・・・・気に入った・・・。」
ブル衛門「・・・・はっ・・・?」
ローリー「男は殺せ・・・女の方は生け捕りにしろ・・・。部屋に飾る剥製にする・・・。」
在ろうことかクレスを着せ替え人形にするつもりのローリー・・・。
ブル衛門「金額は・・・・?」
ローリー「2000万ドニアだ!!!」
ブル衛門「はっはっは・・・特別ボーナスだぜ!!!ひょろい男にヒ弱な女で2000万とは!!!!」
クレス「いや〜〜〜〜ん!!怖いわ!!ヤスノVぃぃ!!!」
ヤスノV「クレスさん・・楽しんでないですか・・・?」
3枚目のクッキーを食べながら足をバタつかせるクレス・・・。
クレスは・・・どうあっても戦わないらしい・・・・・。
ブル衛門「まずは青マントからだ!!!!!」
ヤスノVに突っ込んでくるブル衛門・・・。
ヤスノV「(くそ・・・!!!!やるしかない!!!)」
ブル衛門に突っ込むヤスノV・・・。ヤスノブレードを抜いて突っ込む・・・・・。
ヤスノV「うらぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」
ドガ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!!!!!!!!!!!!
大きな音が鳴ったその瞬間、ヤスノVは大空に舞い上がっていた・・・・。
本日、3度目である・・・・。
「二度あることは三度ある」というが・・・・ヤスノVは学習能力が低い・・・・。
ブル衛門「はっはっはっはっは!!!!!」
ヤスノV「ぐふぉぉ〜〜〜〜〜あぁぁぁ!!!!!」
クレス「・・・・・・・・ぶっ・・・」
宙に舞うヤスノVを見て吹き出すクレス・・・・。
ヤスノVはクレスの方に飛んでくる・・・。
トスッ・・・・・・・。
ヤスノVを軽く足で止めるクレス・・・。
そのままの体勢でヤスノVは口を開いた・・・・。
ヤスノV「すんません・・・・助けてください・・・部長・・・・。」
泣きながら上司に訴える平社員ヤスノV・・・・・。
どこかの会社に良くある光景・・・・・。
もっとも・・・優しい上司は足蹴にはしないのだろうが・・・・・。
シルフィー「・・・・・・人間の男ってこんなに弱いのね・・・・」
ミルフィー「知らなかったわ・・・・・。」
蔑んだ目でヤスノVを見る妖精二人・・・・。
今、ヤスノVは悲しみのドン底にいる・・・・。
クレス「ふぅ・・・しょうがないわね・・・。」
そういうとクレスは「大きなカバン」から「サイコロ」を取り出しヤスノVに手渡す・・・。
そして5枚目のクッキーを食べだした・・・。
クレス「それで1以外が出たら戦ってあげる・・・。」
ヤスノV「ええっ・・!?もっ、もし・・・・1だったら・・・?」
クレス「1回休みで私の出番は無し・・・。やすのぶくんが負けたら・・・即、私は剥製ね・・・。」
にっこり笑って6枚目のクッキーを食べるクレス・・・。
ブル衛門「・・・・くっくっく・・・誰が出てきても一緒だ・・・」
ローリー「くくくくくく・・・・猫耳は・・はずせないナァ・・・・」
余裕を見せて襲ってこないブル衛門・・・・。
ヤスノV「(ううううう・・・・六分の五だ!!!!やってやる!!)」
ころころころころ・・・・・・カタッ・・・・・
目は・・・・・「1」である・・・・。
ヤスノV「うわぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」
頭を両手で抱えて嘆くヤスノV・・・・。
7枚目のクッキーを袋から取り出すクレス・・・・。
ヤスノV「わいは・・・・上司だけやのうて・・・・運にまで見放されても〜〜〜〜たぁ〜〜〜〜〜〜!!!!!」
クレス「さっさと行って・・・・やっつけてきてね・・・。」
ヤスノVはオタオタしている・・・。
自分の勝利を信じることが出来ないらしい・・・・。
ヤスノV「・・・・・・・・っ・・くっ・・・・・・・」
悔しそうに歯を食いしばるヤスノVに8枚目のクッキーを持って、クレスはこう言った・・・。
クレス「やすのぶくん、今日まで頑張ってきた事・・・思い出して・・・今のあなたにはたくさんの「必殺技」があるでしょう・・?」
ヤスノV「・・・・・・・。」
剣を強く握るヤスノV・・・・・。
クレス「ヤスノVの力を・・・見せ付けてやりなさいよ・・・・・。」
ヤスノV「(・・・・クレスさんは俺を信用してくれているんだ・・・・・・。)」
ヤスノVの目にいつもの光が戻ってくる・・・・。
ヤスノV「(ここで・・・期待に応えられなきゃ・・・・・)」
ヤスノVはブル衛門の方を向いて愛剣「ヤスノブレード」を力強く構える・・・・。
ヤスノV「(ヒーローでも、なんでもない!!!!!!)」
ブル衛門「あの世での待ち合わせは済んだか?」
ニヤニヤしながら剣を構えるブル衛門・・・。
ヤスノV「黙れ!!!豚野郎!!!!!お前なんかに負けるか!!!!」
ヤスノVは剣を空高く持ち上げた。
ヤスノV「いくぞ!ブルファイター!!ヤスノブレードから繰り出す俺の必殺技をくらえ!!」
ブル衛門「何!!!??必殺技だと??」
このシチュエーション・・・・「ヤスノブーム」を出すつもりのようだ・・・。
クレス「・・・・・・・・」
10枚目のクッキーを食べながら呆れた顔をするクレス・・・・。
ヤスノV「食らえ!!ヤスノブーム!!!」
ブル衛門はヤスノVの気迫を感じ、剣でガード姿勢をとる。
ヤスノVがヤスノブレードを一気に振り下ろす。
ヤスノV「・・・・・・・・」
ローリー「・・・・・・・・」
ブル衛門「・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・。
クレス「・・・・なんにも・・・出ないネぇ〜〜〜・・・・・」
ヤスノV「くそ!!!今日は「水曜日」だから出るはずなのに!!!!!」
焦るヤスノV・・・・。ちなみにヤスノVは「水属性」である・・・・。
ヤスノV「なんで出せないんだろう・・・・?」
ローリー「は〜〜〜〜っはっはっはっは・・・・・・・」
高笑いするローリー・・・・・。
ブル衛門「本当に「燃えないゴミ」みたいな技だな・・・・」
敵に突っ込まれるヤスノV・・・・。
本当にゴミみたいなヒーローである・・・・・。
ブル衛門「ならば俺の「必殺技」を見せてやる!!!!!」
そういうとブル衛門は剣を突き出してきた!!!!
ブル衛門「ぶるぶる!!腱鞘剣!!!!!!!」
ブル衛門の突きがブレて三〜四重に見える・・・・。
残像を残した斬撃がヤスノVを襲う・・・・・。
ヤスノV「うわぁぁ〜〜〜〜〜っ!!!!!」
ヤスノVに鋭い突きが襲い掛かる・・・・。
ガキ〜〜〜〜〜〜〜ィィン!!!!!!!
ブル衛門「!!!??????何!!!!???????」
剣が弾かれて驚きを隠せないブル衛門・・・・。
ローリー「・・・・・・細工か・・・・」
そう、ヤスノVの着ている「ヤスノブレザー」は細工員あおざるが特別にあしらったものである。
そう簡単に破れることも、剣を貫くことも出来ない・・・。
低級服にこれだけの細工を施せる細工士は他にはそうはいない・・・・・。
ヤスノV「あぶなかった・・・痛ててて・・・・・・」
しかし、衝撃までは吸収できない為、かなりのダメージは受けている・・・・。
どの道、あと1撃でヤスノVは敗れてしまう・・・・・・。
ブル衛門「おのれ!!!!ゴミの・・・カスの分際で!!!!!!!!」
一撃でヤスノVを倒せず興奮するブル衛門・・・。
ヤスノV「(くそ!!こっちから攻めないと・・・・・勝てない・・・・)」
ローリー「ブル衛門!殺ってしまえ!!!!」
ローリーの檄が飛ぶ・・・・。
シルフィー「がんばって・・・・ヤスノVさん・・・・」
ミルフィー「妖精の神の加護を・・・・」
両手を組んで応援してくれる妖精二人・・・・。
ヤスノV「(実験中だったが・・・・やるか・・・・・)」
するとヤスノVはブル衛門に突進して行った・・・・。
そのスピードはかなりのものである・・・・。
又、体当たりをするのであろうか??
ブル衛門「バカめ!!!!!!!!!!!!!」
ヤスノV「ヤスノブランチ!!!!!!!」
剣を振りかぶるブル衛門・・・・しかしその瞬間、目を疑う現象が発生する・・・・・。
ブル衛門「!!!!!!!!??????なにぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜??」
ローリー「なんだと!!!!!?????」
クレス「・・・・・・・・・・・」
ヤスノVに見えないように小さくガッツポーズをするクレス・・・。
うれしそうに16枚目のクッキーを胃に流し込む・・・・・。
ブル衛門「3人に!!!!増えた!!!!!!!????」
「あおざる」により極限まで細工されたブーツ、
毎日、新米奥さんの依頼の買い物で鍛えた足腰、
ちょっと寄り道して図書館で読んだスキル書。
この3つが合わさり、ヤスノVは「回避率」を上げるスキルを覚えていた・・・・。
ローリー「バカな!!!!!!!ありえな〜〜〜〜〜〜い!!!!!!!!!」
赤い蝶ネクタイを両手で引きちぎるように伸ばすローリー・・・。
しかし、蝶ネクタイはちぎれない・・・・・・。
ブル衛門「み、3つとも薙ぎ払ってくれるわぁ!!!!!!!」
そういうとブル衛門は剣を振る・・・。
スカッ!!!!!!!!!!!!!
しかし、3つのヤスノVはすべて残像で本体は後ろに回りこんでいた・・・・。
2体ではなく3体の残像を作り出していたのだ・・・・。
完全にブル衛門の「虚」をついたヤスノV・・・。
ヤスノV「(弱点は・・・・・首・・・!!!!!!!!)」
ヤスノVは渾身の力でもう一つの必殺技を繰り出す・・・・。
ヤスノV「食らえ!!!ヤスノブレイダァーーーーーーー!!!!!!」
説明しよう!!
ヤスノブレイダーとは敵の弱点を勘で見極めて思いっきり剣を振るだけの必殺技である・・・・。
しかし、急所はある程度「見た目」でわかるので毎回成功する荒技である・・・・。
ブル衛門「ッガッ!!!!!!!!!」
ブル衛門の首から血が吹き出し倒れこむ・・・・・。
ヤスノVは勝利したのだ・・・・・。
ローリー「っくっくっくう・・・・・・くそぉぉぉ〜〜〜〜〜!!!!!」
○ヤスノVvs●ブル衛門 (決め技 : ヤスノブランチ&ヤスノブレイダー)
・・・・・・・・・・・・・・・・。
ヤスノV「観念しろ!!ローリー・コンダー!!!!!」
ローリー「ぐぅぅぅ〜〜〜〜〜っ・・・やるじゃないかァァッ・・・・妖精は・・持っていくがいい・・・・」
悔しそうにテーブルの上のボタンに手を伸ばす・・・。
ぽちっ・・・・・
古典的なボタン音がする・・・。
すると細工された壁が勝手に開き、妖精がこちらに飛んできた・・・・。
ゴンザレス「ありがとぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
低音のドスの効いた声・・・・・・。
髪は黒髪、面長で顎の割れた・・・筋肉ムチムチの妖精が飛んでくる・・・・。
よく見ると髭まで生えている・・・・。
レアモノのムチムチの妖精・・・・・それは、ダメな方にムチムチしていた・・・・。
いや、ある意味・・・本物の・・・レアモノなのかもしれない・・・・。
ゴンザレス「好きよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!戦士様ぁぁ〜〜〜〜!!」
ヤスノV「ヤ・・・・ヤスノッ・・・・ブレイダーァァァアアアア!!!!!!!」
あまりに腹が立って、突然抜刀するヤスノV・・・、しかし・・・・・
ゴンザレス「危ないッ!!!!!」
余裕の顔つきで・・真剣白羽取りする妖精・・・・ゴンザレス・・・・・。
何故、この妖精が捕まったのだろうか・・・?
ヤスノV「何だよ??この未確認生物!!!!!???」
汗を噴出しながら腕にしがみつくゴンザレスを離そうとするヤスノV・・・。
シルフィー「失礼な!!!その方は「次の女王候補」の一人なのよ!!!」
ミルフィー「お、お怪我はありませんか?」
妖精の国の政権は・・とんでもなく・・・・・修羅場である・・・・。
ヤスノV「バカな!!!じゃぁ・・ティアラは・・・?何処に??」
ヤスノVはティアラが捕まっていると思っていたので事の他、焦った・・・。
ゴンザレス「ティ・・・ティアラ!!!!?????」
驚いて声を出すゴンザレス・・・・。
ヤスノV「知ってるのか・・・?」
ヤスノVがゴンザレスに聞きよると・・・下を向いて返答した・・・・。
ゴンザレス「その妖精は・・・・きっと・・草原の息吹の・・・・泉から離れていない筈です・・・・・。」
ヤスノV「何!!!??」
クレス「・・・・・・。」
21枚目のクッキーを頬張りながら話を聞いていたクレスが口を開く・・・。
クレス「ここは任せて行っていいよ・・・・。」
にっこり笑ってヤスノVの肩を叩く・・・。
ヤスノV「すいません!!!!クレスさん!!!!」
そういうとヤスノVは大急ぎで一路、「草原の息吹」を目指した・・・・。
ゴンザレス「ああっ・・・・・」
引きとめようとするゴンザレス・・・・。
それを見て疑問を持ったクレスがゴンザレスに問う・・・。
クレス「どうしたの・・・?なんか・・あるの??」
ゴンザレス「ティアラさんは・・・・今日で10歳になるんです・・・・。」
クレス「へぇ〜〜〜おめでたいネェ・・・・」
顔を明るくさせて笑うクレスをローリーは卑下した・・・・・。
ローリー「っくっくっくっくっくっく・・これだから学の無い奴は・・・・・」
クレス「なんですってぇ〜〜〜〜???」
さっきまでは神妙にしていたローリーが大口を叩き出す・・・・・。
ヤスノVがいなくなった為、安心しているのか・・・?
しかしその大口は切実なる真実を語りだした・・・・・。
ローリー「妖精の寿命は・・「10年」ぴったりなんだよ!!!!!!!」
クレス「!!!!!!!!!!!!!」
驚いて目を大きくするクレス・・・。
初めて聞く真実である・・・・。
妖精たちはポロポロと涙を流していた・・・・・。
ローリーはクルクル回り、歌いながら気を失っているブル衛門の方に行く・・・。
ローリー「アホのマントは〜〜何も知らず〜〜〜♪」
ローリー「妖精探して無駄骨を〜〜〜〜〜♪」
ローリー「悔し涙をながしても〜〜、全部無駄無駄!無駄足さ〜〜〜〜〜!!!♪」
下手糞な歌を歌いながら上機嫌のローリー・・・。
クレス「黙れ!!!この・・・変態中年男!!!!!」
クレスを睨み付けて懐から「天使の光」を取り出すローリー・・・。
クレス「!!」
ローリー「起きろ!!多少の傷をつけてもいい!!!やってしまえ!!ブル衛門!!!」
「天使の光」がブル衛門に注ぎ込まれていく・・・・。
せっかく倒したブル衛門が「復活」してしまったのだ・・・・・。
ブル衛門「効〜〜〜〜〜〜〜〜
く〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
ZEEEEEEEEEEEE
NAAAAAAAAAA!!!!!!!!!」
その瞬間、クレスの目が座る・・・・・。
ブル衛門「はっはっは、女一人、楽な仕事だ!!!同じ轍は二度踏まんぞ?」
余裕そうな顔をするブル衛門・・・・。
首の傷跡を撫でながら剣を構える・・・。
クレス「・・・・・・・・。」
クレスは又、懐から「サイコロ」を取り出した・・・・。
ローリー「ははははは、またサイコロか・・・・・」
すると・・・クレスは手のひらで「サイコロ」を転がしてこう言った・・・。
クレス「・・・・・これ・・グラサイなのよ・・・」
(グラサイ・・鉛が入っていて「同じ目しか出ないインチキ用のサイコロ」です(´▽`)/)
ローリー「そうまでして戦いたくなかったのか?くっくっく・・・・・。」
クレス「理由は3つあるわ・・・・。」
指を立てて説明していくクレス・・・・・。
クレス「1つ、うちの査定員に頼まれて実戦で特訓させたかったから・・・。」
「2つ、ヤスノVのすべての必殺技を確認するため・・・。」
「3つ、女の子だからタマには誰かに守ってもらいたいじゃん・・・・。」
かわいらしく・・にっこり微笑むクレス・・・・。
その瞬間、クレスは親指で「サイコロ」をブル衛門に向けて弾き飛ばす・・・・。
バシッ!!!!!!!!!!!!!!!!
ブル衛門「痛てェェェッ!!!!!!!!!!!!!」
額に赤く、サイコロの「2」の目が浮き出てくる・・・・・・。
ブル衛門「こ、こしゃくなァ!!!!!」
ブル衛門はクレスに向かって突進してくる・・・・。
クレス「クレスの呪い・・・・・「2」の目!!!!!!!!!!!」
そういうと「大きなカバン」から大きな槍を一瞬で取り出すクレス・・・・。
ブル衛門「!!!!!!!!!!!!!!」
クレス「丑の刻参りぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ズカァァーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ローリー「あぁあっぁっぁぁあぁあわわわわわわわああぁああ〜〜〜〜〜〜〜・・・・」
一瞬の出来事に震えるローリー・・・・・。
妖精も驚いて、その状況を見ている・・・・・。
クレスがここまでの実力者であるとは、誰もが思っていなかったらしい・・・。
壁まで吹っ飛び、ブル衛門の心臓に大きな槍が差し込まれている・・・・。
その姿はまるで「丑の刻参り」の藁人形の様な姿だった・・・・・。
○クレスvs●ブル衛門 (決め技 : クレスの呪い「2の目」丑の刻参り)
クレス「・・・・終わった・・・・・・。」
ローリー「くそ!!おれは、は・伯爵の息子だぞ!!捕まったって・・・ぜ・絶対・・・釈放されるッ!!!」
ローリー「国家間条約で、人への抜刀は禁止だ!!俺まで殺したら・・・
貴様が刑務所に入ることになるんだもんナァ!!!!!」
クレス「!!!!?」
存外な言葉に驚くクレス・・・。
確かに、ローリーの言っている事は正しい・・・・。
ここでローリーを殺せば、クレスはCRcountを一度に「8」は受けることになる・・・。
CRcountとは、犯罪の度合いを示す。
「3」を越えた時点で監獄に入れられてしまう為、「8」では保釈金も相応に掛かってしまう・・・。
いや・・・何より前科者になってしまう・・・・・。
ローリー「ま・ま・・・まだ終わらないぞォ!!貴様は絶対に!!!剥製にしてやる!!!!!!」
クレス「・・・・・・・。」
額の血管が浮き出るのを「サンタ帽子」で隠すクレス・・・・。
ローリーも、今ここで殺されないという絶対の自信があるようだ・・・・。
それでも・・・懐から新しいサイコロを取り出そうとする・・・。
その時、クレスの「ささ」が鳴り出す・・・。
ささやき電話・・・・・通称「ささ」は1:1で話するときに用いる携帯電話のような物である・・・。
クレス「・・・・・・・。」
ローリーを睨み付けて「ささ」に出るクレス・・・。
??「もしもし!!?おれ!!おれおれ・・・おれおれおれおれおれ・・・おれおれ詐欺・・・・・・・・!!!」
クレス「・・・・・・・。」
自ら、「おれおれ詐欺」と教えてくれる親切で明るそうな男の声・・・。
その正体をクレスは知っていた・・・・。
クレス「何・・・?眠傀会長ォ・・・・。」
眠傀「ははは、ひさしぶり、クレス・・・」
自ら「おれおれ詐欺」と教えてくれる親切な明るい男。眠傀は、イデアツーリストの役員である。
役職は会長で「イデアツーリストの元社長」である・・・。
しかし、放浪癖があり、世界中を飛び回るのが趣味で、滅多に会社には顔を出さない・・・。
結果、おけなに「社長職」を譲ってしまった人物である。
世の中の困っている人の為、「世直しの旅」を続けているのだが・・・・
ここだけの話、かすみの旦那様である・・・。
クレス「今、忙しいんだけど・・・・」
電話を切ろうとするクレスに用件を慌てて言う眠傀・・・。
眠傀「おいおい!!そこに、ローリー・コンダーが居るだろ???」
クレス「・・・・・?・・ええ・・・。」
眠傀「作戦通り・・・そいつの親父、パッソ・コンダーの「今までの不正」を暴いてやったゾ!!!」
クレス「・・・はぁっ???何の話よ・・・・・」
眠傀「あれ?社長から聞いてねぇ?「根こそぎ殺虫作戦・・・?」」
「子供を見れば親がわかる・・・。」そう、よく言うが、親も相当悪い事をしていたようだ・・・。
王宮の極秘資料を用いて金儲けしていたようである・・・。
クレス「・・・・・・全然・・・」
眠傀「そっか、まぁいいや・・・とにかくコンダー家の「伯爵の地位」は剥奪されたから!!!」
クレス「(ΦωΦ)!!」
目をキラキラさせてローリーを見るクレス・・・・。
そう、社長おけなは前もって「ローリーの逃げ道」を塞ぐ作戦を立てて、先行して眠傀に動いてもらっていたのだ・・・。
こうなる事を予想していたのだろうか?
訳が判らず、汗をダラダラ流してクレスに怒鳴り付けるローリー・・・・・。
ローリー「何をうれしそうに見ている!?そんな目で・・・・見るナァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・。
賞金首になって28時間・・・「ぶるぶる団」は壊滅・・・。
伯爵の嫡男だった男・・・ローリー・コンダーはこの後すぐ、クレスによって王宮警護団「ACE‘s」に引き渡され、逮捕・拘束される・・・・。
監獄に入り、父「パッソ・コンダー」の姿を見たローリーは初めて自分の現状を知る事となる・・・・。
着せ替え人形が枕元に無いと眠れないローリーは三日三晩、一睡も出来ず・・・・・
そして4日後・・・・死刑は執行された・・・・・。
結果、コンダー家は衰退の一途を歩み始めることになるが・・・・
「イデアツーリスト」に対して、逆恨みをしてくる「コンダー家の生き残り」がでてくる事を、今はまだ誰も知らない・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヤスノV「はぁはぁ・・・・はぁ・・・」
泉の近くまで走ってきたヤスノV・・・・。
すっかり夜になり、夜空には三日月が出ていた・・・・。
森のせいで暗さに輪がかかる・・・。
が、木の上に光る何かをヤスノVは見つけた・・・・。
ヤスノV「ティアラ!!!!???」
声を掛けるヤスノV・・・・。
ティアラ「はぁ・・・・・・はぁ・・・。」
その息使いは荒く・・・・顔色も悪い・・・。
とても苦しそうにしている・・・・。
グラリ・・・・・・
目眩のせいか、木から落ちてしまうティアラ・・・・。
もう、飛ぶ力も残ってはいないらしい・・・・。
ヤスノV「危ない!!!」
ヤスノVは手を伸ばしティアラを受け止める・・・・。
ヤスノV「ティアラ!!大丈夫か!!??」
ティアラ「やすのぶさん・・・・・・・」
ティアラの胸には「生命の木」の苗木が持たれていた・・・。
ヤスノV「ティアラ・・・・っ????」
ティアラの体から発せられている光は「生命の木」に吸い込まれていく・・・。
ティアラ「妖精は・・10年経つと・・・・生命の木に・・・強制的に・・命を・・・」
ヤスノV「しゃべるな!!!医者へ行こう!!!」
事情を知らないヤスノVは何とかしようと必死だ・・・・・。
・・・すべてはもう手遅れなのに・・・・・。
ティアラ「ふふ・・・ふ・・無理なの・・・これが・・・運命・・・」
にっこりと笑い・・・・うっすらと涙を浮かべるティアラ・・・・。
ヤスノV「そんな・・・ルゥクに!!ルゥクに知らせなきゃ!!!!」
ティアラ「やめて・・・こんな姿だけはあの人に・・・見られたく・・な・いの・・・」
ヤスノV「・・・・じゅ・・寿命・・・・・なのか?」
事情を理解していくヤスノV・・・。
小さくうなずくティアラに・・ヤスノVは大粒の涙を滝のように流している・・・・・・。
喉の奥から乾いた感覚、頭に血が昇り、自分への嫌悪感が支配する・・・・・。
ヤスノV「昼間のさよならは・・・・こういうことだったのか・・・?」
小さくうなずくティアラ・・・・。
ヤスノV「君の夢が・・「おばあさんになること」だったのは・・・・こういうことだったのか・・・!?」
小さくうなずくティアラ・・・・。
ティアラ「本当は・・・老けても・・良かったの・・・・・みんなと・・年老いて・・いきたかったナ・・・。」
ヤスノV「ぐうぅううううう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!!!」
ヤスノVは「何も出来ない自分」に悔しくて涙を流していた・・・。
ティアラ「やすのぶさん、お願い・・この「生命の木」・・・ルゥクに渡して・・・欲しいの・・・・」
ヤスノV「えっ・・・・・・?」
ティアラ「この木は・・「生命の果実」を実らせるの・・・それを・・あの人に・・あの人の・・未来の家族に・・・」
ヤスノV「ティアラ!!!!」
ティアラの光は「生命の木」に吸い込まれてきってしまいそうになっている・・・・。
ティアラに残された時間は・・・・もう・・・・・無かった・・・・・・・。
ティアラ「私の・・・最後の・・夢よ・・。あの人の・・未来の奥さんになる人に・・・子供に・・・孫に・・・食べさせてあげたいの・・」
ヤスノV「・・・・・・・・・。」
塞ぎ込むヤスノV。
ヤスノVはヒーローを目指すきっかけになった男に・・・心の中で問いかける・・・・。
ヤスノV「(あなたは・・・・笑うのですか・・?この依頼をもし、あなたが受けたならば・・・笑うのですか・・・?)」
ティアラ「・・・やす・・の・・ぶさん・・・・・」
ヤスノVは大粒の涙を流し、哀しそうに・・・苦しそうに・・・・・・言った・・・・。
ヤスノV「その・・・依頼・・・・・引き受けさせて・・・もらうョ・・・・・・・。」
ティアラ「ありが・・・とう・・やす・・・の・・ぶさん・・・・・」
ティアラの姿さえも「生命の木」に吸い込まれて・・・生命の木も又、光を無くしていった・・・。
「生命の木」を大事に両手で抱えるヤスノV・・・。
ヤスノV「・・・・このミッションだけは・・・失敗・・・・・しない!!!!!!!」
そういうと、ヤスノVは「草原の街道」ルゥクの家を目指して行った・・・・。
草原の街道、鍛冶屋「ルゥクの家」・・・・。
数多くある鍛冶屋の中でも小さめの鍛冶屋・・・。
今は跡を告ぐ職人もいないようでかなり寂れていた・・・・。
ヤスノV「・・・・・・・。」
家の前まで行くと心配でずっと外で待っていたのか・・・、泥まみれのままのルゥクが立っていた・・・。
ルゥク「やすのぶさん!!!!」
ヤスノVの姿にティアラの無事を信じてやまないルゥクが駆け寄ってくる・・・。
ルゥク「・・・?あの・・・ティアラ・・・・は・・・・・・?」
ヤスノVの周りにティアラの姿が見えないので青ざめるルゥク・・・。
ヤスノVの手元に「生命の木」の苗木があることに気が付いて・・・・・・急に涙を流し始めた・・・・・・。
ルゥク「そ!!!それは・・・ッ・・・・妖精の・・・「死の象徴」・・・・・・・・・。」
ルゥクは流石に「植物学者の卵」である・・・。「生命の木」が何を意味するのかを知っていた・・・・。
ヤスノV「・・・・・・・・。」
何も言えず、唯々・・・ヤスノVは涙を流すしかなかった・・・・。
それでも、一生懸命・・・力を振り絞り、ルゥクにこう言った・・・・。
ヤスノV「この木から生る・・「生命の果実」を・・・未来の家族と・・・食べて欲しいって・・・・・」
ルゥク「うぐぅっぅ・・・・ぅぅ・・・・・」
涙が止まらないルゥク・・・。
寿命までは知らずにいたルゥクは、突然のティアラとの別れに絶望していた・・・・・。
ヤスノV「・・・・・・・。」
無言でルゥクに「生命の木」を手渡すヤスノV・・・・。
すると、ルゥクはヤスノVに報酬である「真輝の術書」を手渡した・・・。
ルゥク「ありがとう・・・ございました・・やすのぶさん・・・・。」
ヤスノV「・・・・・・・。」
手を出しづらいヤスノV・・・。すると、ルゥクはヤスノVにこう言った・・・。
ルゥク「これで・・・やすのぶさんの夢を・・・・叶えてください・・・・・」
泣きながら笑うルゥクに・・・・苦しそうにヤスノVは泣きながら・・微笑む・・・・。
ヤスノV「ありが・・とう・・・・ルゥク・・・・」
そう言い残して、ヤスノVは力なく「イデアツーリスト」へと帰っていった・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
会社に戻ると社長「おけな」、それに帰ってきたばかりのかすみとクレスが椅子に座ってやすのぶを待っていた。
今日あった出来事をみんなに報告するやすのぶ・・・・。
おけな「そうだったのか・・・・ティアラさんは・・寿命だったのか・・・・」
かすみ「・・・・・・・・。」
ハンカチで涙をふくかすみ・・・。
クレス「・・・・・・・・・。」
奥のテーブルに座り、「コックリさん」と無言でやり取りをするクレス・・・・。
やすのぶ「おれ、いつでも笑って依頼を受けれるヒーローになりたかったのに・・・泣いちゃいましたよ・・・」
しょげた顔をするやすのぶ・・・・社長おけなは優しく・・・やすのぶにこう答える・・・・。
おけな「俺は、それでいいと思うゾ・・・。それが「ヤスノV」じゃないか?」
かすみ「そうよ!私は笑うヒーローよりも、そっちの方が・・いいと思うわ!!」
クレス「・・・・・・・・・」
無言で優しそうに微笑むクレス・・・・。
やすのぶ「・・・・・・・」
みんなの笑顔がやすのぶに力を与えてくれる・・・。
やすのぶは涙を拭って元気良く・・・こう言った・・・・。
やすのぶ「・・・・で・ですよね!!?そうですよね!!!」
笑いながら今日の報酬の「真輝の術書」をテーブルに置くやすのぶ・・・。
おけな「・・・・・・・・・。」
タバコに火をつけて、おけなは笑いながら術書をやすのぶに戻す・・・。
やすのぶ「????えっ?」
おけな「特別ボーナスだ、今日は・・・・全部やるよ・・・・。」
かすみ「良かったね!!!やすのぶくん!!!!」
やすのぶ「やった!!ありがとうございます・・・・って・・・あの・・・・」
おけな「・・・?どうした?やすのぶくん?」
やすのぶ「「真輝の術書」の使い方を知らないんですが・・・・。」
かすみ「武器や防具に張ると「パワーアップ」するのよ・・・・。」
やすのぶ「オオオオォォ オオオーー・・・・・すげぇ!!!」
やすのぶは早速、自分の愛刀「ヤスノブレード」を取り出す・・・。
かすみ「あっ・・・・やすのぶくん・・・・?」
やすのぶ「ありがとうルゥク!!これで俺は夢に一歩!近づくゼ!!!!!!」
かすみの説明をろくに聞かず・・・景気良くヤスノブレードに「真輝の術書」を貼り付けようとするやすのぶ・・・・。
パシーーーーーーーン・・・・・・
パリーーーーーーーン・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
やすのぶ「・・・・・・・・?」
おけな「ああぁぁァ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
かすみ「ああぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
止めようとする二人が間に合わず・・・・「真輝の術書」が弾けて砕け散る・・・・・。
やすのぶは「真輝の術書」の貼り付けに「失敗」したのだ・・・・。
クレス「・・・・ぶっ・・・・・」
突然の出来事に吹き出してしまうクレス・・・・。
コックリさんの「10ドニア」玉もゆっくり「NO」の方へと向かっていく途中だったので止めようも無い・・・・。
「真輝の術書」の貼り付けの「失敗」・・・・やすのぶはその「意味」が判っていない・・・。
やすのぶ「あれっ?なんで消えたの?「真輝の術書」????」
かすみ「うっうっううっ・・・・・・・」
手を目に押し当てて泣き出すかすみ・・・・。
クレス「コックリさん、コックリさん・・・・やすのぶくんは幸せになれますか?」
コックリさんの「10ドニア」玉は「NO」の周りをグルグル回る・・・・。
おけな「「真輝の術書」は・・・・無くなった・・・・・。」
タバコの灰を灰皿に落とし・・・斜め下を向くおけな・・・・。
やすのぶ「えっ・・・・・?」
目を大きく開けて呆けるやすのぶ・・・。
かすみ「その手の人に売れば・・・400万ドニアはするのに・・・・」
おけな「バカッ!!!それを今言ったら・・・・!!!!」
やすのぶ「・・・・・・・」
やすのぶ「・・・・・・・・・・・・・・・」
やすのぶ「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
目玉が飛び出るやすのぶ・・・・。
やすのぶ「なんだってぇぇぇえぇぇぇぇえぃぇぃぇえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!」
おけな「あっ・・・や、やすのぶくん・・・元気出そうぜ・・・・・」
やすのぶはルゥクに話した夢を思い出す・・・・・・。
一般商店に売っている肉を買い占めて・・・腹いっぱい、食うことかな・・・。
やすのぶ「まさか・・・・いや、確かあの時は・・・俺の本当の夢は黙ってて・・・・・・・」
それを思い出すとやすのぶは今までの日常の「肉への思い」が込み上げてきた・・・・。
うわ〜〜〜〜、あのお肉・・・うまそ・・・・2500ドニア!!!???買えへんってぇ〜〜・・・・・・
毎日、「4ドニア」なら、貯金できそうだ・・・・・・
あかんやん!625日も掛かってまうやん!!!・・・懸賞の応募に切り替えよう・・・・・・
商品の発送を持って当選の連絡・・・・・?
当たったんかなぁ〜〜〜・・・・・・「お肉!わくわくプレゼント」係・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・。
やすのぶ「うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!お肉が!!1600枚も買えるやんけぇぇ!!!!!!!!!」
錯乱しているが・・・こういう計算は妙に速いやすのぶ・・・・・。
かすみ「あああぁぁ・・・・ううううっうっううっ・・・・・・・」
両手を顔に押し当てて・・・激しく泣き出すかすみ・・・・。
そして・・台所へ逃げるように走っていく・・・・。
これ以上はやすのぶを見ていられないらしい・・・・・。
クレス「コックリさん、コックリさん・・・・やすのぶくんが幸せになれる方法はありませんか?」
ビシッ!!!!!!!!
コックリさんの「10ドニア」玉に突然ヒビが入る・・・・。
クレス「うわぁああぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!????」
初めての経験に声を上げ、驚きを隠せないクレス・・・・・。
おけな「そうだよな・・・お口にとろける肉汁のロマン・・・・俺にもわかるよ・・・・・。」
慰めようが無く、おかしな事を言い出してしまう社長おけな・・・・。
やすのぶは「お肉の夢」も「強くなる夢」も潰えてしまった・・・・・。
やすのぶ「(ToT) ・・・・・・・」
やすのぶ「(TдT)うえぇぇぇ〜〜〜〜〜〜・・・」
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報告書
氏名 : やすのぶ
ヒーロー名 : ヤスノV
依頼内容 : 妖精ティアラの救出
今回の報酬 : 真輝の術書
月賦 : 5,000ドニア(備考に詳細記載)
遂行可能ミッションレベル : C−
査定評価
イデアツーリスト内ランク 最下位
勤務期間 30日
備考
・ イデアツーリストの平社員として登録。
・ クレス部長による特訓の結果、大幅なパワーアップが出来ています。
・ 今月の支給額はかすみ専務の指示により5,000ドニアとします。来月より月賦支給額、随時変更方式になります。
・ クレス部長によりヤスノVの必殺技の詳細が判明、下記に記載します。
・ 社長命令により「戦士の剣、レア3、金ミス3(+18)」を支給します。
従来使用していた「銅の剣、レア無、金ミス無」を回収します。
・ 細工員あおざるがヤスノV用の装備「ヤスノブースター」を開発中、完成後に支給します。
・ 後、訳がわかりませんが・・社長命令により荷受人やすのぶ、送り主「お肉!わくわくプレゼント」係で
一般商店の肉を3枚送りました。代金、8000ドニアは経費より落とします。
ヤスノV 必殺技
・ヤスノブランチ 最大3体まで分身を作る。(回避率up)
・ヤスノブレイダー 敵の弱点を大振りで狙います。
・ヤスノブーム 水曜日に何かが出るらしい。(個人的に何も出ないと思われます。)
査定員 百絵
余談ではあるが・・・・・ここから先は・・・10年後のお話・・・・・・・・・。
イデアの・・・とある一軒家・・・・。
白衣を着た男が庭に植えている木を見つめている・・・。
白衣の男の襟元には大学の校章が刻まれた「金のバッジ」が付いている・・・。
物寂しそうに見つめるその木は・・・無残にも枯れ果ててしまっていた・・・・。
タッタッタッタタッタ・・・・・・。
家の中から庭に出てきた可愛らしい女の子・・・・。
白衣の男の娘のようだが、父親の真似をしてか、白衣を着ている・・・・。
まるで天使のような・・・その可愛らしい女の子の名前は「ヴィクトリア」。
年は3〜4歳程の女の子・・・・。
ヴィクトリアは白衣の男にこう言った・・・・。
ヴィクトリア「パパ・・・きちゃないから・・早くおうちに入って来てョ・・・」
白衣の男「・・・・・・。」
枯木は無残にも虫に巣食われていて、これ以上庭には植えておく事は出来ない状況にまで至っていた・・・。
この木は・・・果実を一度も実らせる事無く・・・枯れ果てたらしい・・・。
しかし、白衣の男にとっては・・・これは大事な木であるらしく・・
娘の心無い言葉に歯を噛み締めていた・・・・。
ヴィクトリア「今日は・・木のお医者さんに・・この木を抜いてもらうんだよね・・・?」
白衣の男「・・・・・あぁ・・・・そうだよ・・・。」
哀しそうに娘の頭を撫でる白衣の男・・・。
ヴィクトリア「ママが早く・・・木のお医者さんの所に行こうって・・・」
家の中から「白衣の男の妻」の声が聞こえる・・・。
妻「あなた・・・早く用意して〜〜・・・庭師さんを迎えに行かないと・・・」
妻にまで「木を抜く」と言われて・・白衣の男は怒りを露わにする・・・。
娘を置いて家の中にツカツカっと早足で入っていく白衣の男・・・。
家の中で口紅を塗っていた妻に厳しい口調でこう言った・・・。
白衣の男「君は・・・僕があの木をどれだけ大切にしているか・・・知っているだろう・・・。」
妻「・・・・・えぇ、・・でもあれだけ虫だらけになっちゃったら近所迷惑になっちゃうじゃない・・」
口紅を塗り終わり、軽くティッシュで口を押さえる白衣の男の妻・・・。
白衣の男「ひどいょ・・・・最低だ・・・・・・」
白衣の男が出した言葉が気に入らなかったのか・・・白衣の男の妻はスクッと立ち上がり
血管を浮き立たせて怒り出した。
妻「なによ!!さっきっから聞いてたらうじうじと!!!あれだけ虫だらけになってんのにこれ以上置いといたら
近所の人になんて言われるか判ったものじゃないわ!!!!大体!!植物学者のあなたが治せない時点でアウトよ!!」
白衣の男「うぅ・・・」
妻「今日だって庭師さんに会いに行くって言ってるのに、なんでまだそんな格好をしているの??
私は化粧の為に何時に起きたと思ってるのょ!!」
白衣の男「だって・・・それは・・」
妻「だっても何もない!!!私が用意してる服を着てネって、いつも言ってるでしょう!!!?もうッ!!!!」
マシンガンのように白衣の男に怒鳴り付ける妻。薮蛇を突付いてしまったらしい・・・。
妻「大体あなたは昔っからそう!!!私と再会した時も泣いてばっかりでッ!!気も付かなければ・・男らしくもない!!!」
白衣の男「なっ・・・昔の事は・・・」
妻「あの時、裸の私に思いっきり抱きついて!!服も用意してくれなかったじゃない!!!」
妻「裸よ?裸!!?人になって初めて目を開けて裸よ!!?」
白衣の男「だって・・・うれしくって・・・」
妻「ひどいわ!!裸なのにうれしい!!?こっちは寒い冬空で裸よ!?わかってんの???ルゥク!!!!??????」
ルゥク「・・ご、ごめん・・・悪かったよぉ〜〜〜・・・ティアラ・・・」
堪らず泣き出しながら謝るルゥク。
するとティアラは息を整えて、にっこり笑い・・・ルゥクにこう言った。
ティアラ「わかってくれれば・・・いいのよ・・・。」
イデアに住む植物学者・・・白衣の男の名はルゥク、そして妻の名はティアラという・・・。
この余談は・・・今はまだ・・・遠い・・遠い・・10年後のお話・・・・・・・・・。
題名:走れ!イデアツーリストのヤスノV
第2話 笑えない依頼 (ルゥク編) 〜〜〜END〜〜〜
紅の氷 イデア YasunoV著